分からないこと 2011.10.11(火)
最近、教師も終わりかけになって、これまでいい加減にしたまま、追究できていないことがたくさんあることに気がつき、あせり始めています。特に、自分が専門としてきている理科の分野でも多くあるのです。
つい最近では、「食塩を水に溶かした時の変化」の学習で、水に食塩10g溶かすと、重さは10g増えますが、「食塩を10g溶かすと、どれくらい水量が増えるのか」については、調べたことがありませんでした。少し増えることは予想がつくのですが、どれくらい増えるのか正確に知りませんでした。実際調べると、水50mLに食塩10g溶かすと約4mL水量が増えました。しかし、水100mLに食塩10gを溶かすと同じように4mL増えるのか、また、砂糖を10g溶かすと食塩と同じ水量増えるのかどうか、これらはまだ調べられていません。
「水は温めると体積が増える、水は凍ると体積が増える」という内容については、4年理科で調べることになっています。では「常温から100度近くまで水温を上げたときに増える体積と、水が凍った時に増える体積と、どちらが大きいのか」について、つい最近まで正確に知りませんでした。
他にも、植物の名前や、ドングリの種類、シダやコケや地衣類や菌類や粘菌の名前など、正確に調べないで過ごしてきてしまったなと反省しきりです。
数日前に、テレビで見たことですが、戦後の灘中学校が進学校へと発展していく様子を、ドラマのようにして紹介していました。見られた方がおられるのではないかと思います。戦後直ぐの教育の混乱期、まだ教科書も整わない頃、灘中の国語の先生が『銀の匙』(中勘助著)の文庫本を教科書として使い、追究的に学び深める学習方法を試みました。国語の学習時間の3年間もかけて、『銀の匙』を深く扱うことにより、調べるおもしろさを体得させて、自ら学ぶ子どもへと育てていきました。たった2行の文章に、1時間の国語時間を費やすような時もありました。保護者からは、「こんな学習をしていて大丈夫なのか」「私学の高い学費を払っているのに、こんな授業をしていていいのか」など、苦情が出たのですが、信念を持って、子どもが追究していく教育を貫き、東大合格者を多数出すような学校へと変容していきました。この話で心に残るのは、教育の崇高な理念です。プリント特訓、受験問題特訓をして東大進学者を増やしたのではなくて、『子どもの追究心を育てること、博学に学ばせること』で、優秀な人材を多く育てたことに心打たれました。
私達の学校も、同じような教育をしているなと思いました。昨年1年生を担任した時には、延べ千件にも及ぶ自由研究発表を子どもが持ち込み、それを延々と聞き合い、深め合い、学び合いました。子どもが興味を持ったことを追究する自由研究発表は、灘中の教育とかなり共通する所があります。感度の高い子ども達が、分からないことをそのままにしないという、真っ直ぐな学びの姿勢が育っていくように感じました。
分からないことは、その場で調べることが大切です。そのためには、行動力と、参考書、辞書、事典、百科事典、図鑑が必要です。
かつて私が公立校にいた頃、私の学級では、参考書、辞書、事典を常にたくさん使いながら学習を進めていました。決して家庭的に恵まれている子どもが多い校区ではありませんでしたが、子ども達は、広辞苑レベルの大きな辞書を買ってもらい、参考書も各教科別に持ち込んでいました。保護者が持たせてくれました。一方、私の机の上にも、子どもの辞書、参考書類に負けないような、国語大辞典、漢和中辞典、人名辞典、数学事典、歴史事典、歴史年表、科学事典、四字熟語辞典、ことわざ事典、産業統計、現代用語辞典、植物図鑑、昆虫図鑑など、出来る限り買い揃えて、学習に臨んでいました。どの学習時間も、子ども同志は真剣勝負のような状況で、教科書、資料、辞典、参考書を使いこなしながら、学習追究をしていたことが懐かしく思い出されます。
日々、分からない事に出合います。分からない事をそのままにしないで、直ぐにその場で調べることが、子どもを賢く育てる一番の方法であると確信します。
先の灘中の教育では、『銀の匙』の文章を文脈に沿って理解するということが一番の目的ではなくて、『銀の匙』の内容を切っ掛けに、思いっきり脱線、寄り道、道草しながら、個々人の調べ学習、追究力を高めることが重視されていました。
私達は、子どもを塾に入れておきさえすれば、進学は何とかしてくれると思いがちですが、そうではないのですね。小学校、それも低学年の時に、身の回りの多くの資料を活用する力、それを読み深める能力、多くの知識を覚える力を鍛えることが、とても大切なのです。放置すると、もったいないということです。
京都一周トレイル
休日、京都に行く用事があったので、朝早く出かけて、伏見稲荷駅から清水寺近くまで、京都一周トレイルの一部を2時間ほど歩きました。
伏見稲荷神社から山頂に続く山道は、摩訶不思議な世界が広がります。隙間がないほど赤い鳥居が延々と建てられていて、その中を歩いて行くと、まるでタイムトンネルの中に吸い込まれて、過去の世界へ向かっているような気持ちにさせられます。寺山修司の映画の一場面のような、前衛映画の一コマのような気分です。
稲荷山の頂上近く、四つ辻と言われる所から北へ下り、その後、山裾に沿ってお寺や神社をつなぎながら、住宅地に出たり山地に入ったりするように、京都一周トレイルは続きます。
標識がよく整備されているので、トレイルの地図を手に持ち、設置された標識を辿りながら歩くと、殆ど迷わないで進むことができます。
伏見稲荷から,比叡山,大原,鞍馬を経て,高雄, 嵐山,苔寺に至る全長約70キロのコースと,豊かな森林や清流,田園風景に恵まれた 京北地域をめぐる全長約40キロのコースからなっています。体力作り、自然観察にいかがでしょう。
<連絡>
▼3年
お天気がよい場合は、「光の学習」をします。光をレンズで集めたり、光を鏡で反射させたり、光と温度との関係を調べたりします。独自学習も、光の学習を進めてください。
また、雲が多い場合は、「種の研究」をします。秋になって、多くの植物は種を作って、冬に備えます。風で飛ぶ種、くっついて運ばれる種、はじけて飛ぶ種など、種の運ばれ方などの研究もしてください。ヌスビトハギ、オナモミ、イノコヅチなど、人や動物にくっつく種研究をしてください。
▼5年
実際の川の研究レポート書きを、11月になったらします。それまでに、近くの川の上流、中流、下流研究をしてくださいね。
また、運動会前後で、「秋の天気の移り変わり」をまとめたいと考えています。新聞の天気図1週間分の切り抜きを、いつでも持ってこれるようにしてください。高気圧、低気圧、前線などの仕組みや、それらによる天気の変化も調べておいてください。
▼6年
でんぷんの消化吸収について、唾液による実験を中心に、調べ学習を進めます。体内の臓器と消化液、三大栄養素の消化についても、資料調べをします。