調べるということ 2011.9.26(月)

 

 さんぽに出かけて、見たことのない植物に出合うと、雑草の場合は、少しだけ採集するようにしています。カメラを持っている場合は、写真を撮ります。これまで、ついつい放置してきた自然も、一つひとつ調べると、それらの中に新たな科学の世界が広がっているのが感じられます。

 最近、矢田丘陵のさんぽ道でキノコをたくさん見つけました。写真を撮って帰りました。名前を調べるのは難しいのですが、分からないなりに、数冊のキノコ図鑑を見比べながら調べて名前をつけてみました。

 また、学校近くの邸宅の石垣には、何種類かの地衣類が見られます。前から気になっていたのですが、やっと最近、その写真を撮り、地衣類の図鑑、これも数種類を見比べながら、名前をつけてみました。間違っていても、取り敢えず名前をつけてみることが大切だと思います。何度か見ている間に、修正されていくものなのです。

 梅雨時の校内の落ち葉には、粘菌が見られます。これも、今まで気がつかなかったのですが、よく見ると何種かあります。一度目に付くと、次々あるのが分かります。子ども達に教えると、すぐに見つけてくれます。教師が知らないということは、学びが広がらないということなのです。

 昆虫も、貝も、海草も、ドングリも、雲も、木も、図鑑を持っています。一歩踏み込むと、初心者用から専門家用まで何種類もの図鑑があります。教師は、全て知っている必要はなくても、そのような世界があることを知っていることが大切です。身近な自然環境は、子どもにとっても、大人にとっても、ワンダーランドです。注意深く見ると、不思議なことで満たされています。

 同じように、言葉の世界も一緒です。昆虫図鑑、植物図鑑を使うように、辞書、参考書、百科事典を使い、深く調べると、何気ない言葉の中にも、豊かな歴史、地域性、国民性が読み取れるときがあります。学校の図書室であまり使われていない大きな辞書、大辞林、広辞苑、国語大辞典を、三冊借りてきています。理科の独自学習の時に、例えば、扇状地、河岸段丘などを調べることで、学習が始まります。担任をしている時は、算数でも、新しい単元に入る場合、「分数」、「小数」などの言葉を辞書で調べると、真正面にその単元を捉えると、玄関から挨拶をして入っていくような学びになるように感じます。

 また、調べるというのは、一つの図鑑や参考書や辞書だけではなくて、複数のものを付き合わせながら調べることが大切です。大学生に、イチョウとサクラとクスノキの木の学習をさせる時、数種類の樹木図鑑の解説を印刷して渡します。同じイチョウの解説でも、その図鑑の筆者によって、分布に詳しい内容、木の形や特徴に詳しい内容、木の名前の言われなどに詳しい内容などの違いがあり、図鑑の比較読み取りが面白くなってきます。

 同じようなことが国語辞典でもあり、編集者によって解説が違っています。一つの辞書だけでなく、いくつかの辞書を付き合わせながら独自学習を深めると、より豊かな言葉の世界に入っていくことができます。

 最近、理科の独自学習の方法について5年生に伝えました。「流れる水のはたらき」の単元に入りました。まずは独自学習からというのは、我が校の学習のあり方の基本です。子ども達は、「教科書」「小学理科学習事典」「スーパー理科事典」などを持っていて、人によってはその他の参考書、中学校の理科図説、中学校の教科書などを持ち込んでいます。さらに準備のよい子どもは、図書館で「川・流れる水のはたらき」についての本を借りています。それぞれが複数の参考書を持ち、さらに国語辞典を持ちます。

 まず、参考書や学習事典のどこに、「流れる水のはたらき」の内容が載っているのか、一気にそれぞれのページを開きました。見比べると、それぞれ特徴のある内容や編集になっています。丁度、樹木図鑑でイチョウを調べた時のように、筆者によって、違った内容・取り扱い・表現がなされています。自分の持っている全ての参考書の関連のページに付箋を貼り、見渡して全貌を捉えました。

 本から学べることは、自分で読んで、独自学習ノートに書いて、一人で学ぶ。これが、独自学習の基礎基本です。なりふり構わず、本から学ぶ。知識を増やす。見方考え方を学ぶ。これが賢くなる最初の一歩です。

 次の独自学習は、参考書からの学びを基に、自分で調べる川を一つ決めて、課題を持ち、「流れる水のはたらき」を実際に調べることです。学者も、文献調査から入り、その後、実地調査をします。手当たり次第、調査をする人はいません。賢い旅行も、事前調査をたくさんしますね。

 自分で、複数の本を付き合わせて調べること、これはとても大切です。

  

フィールドサイエンス

 実際の野外から意味のある情報を得ることは、難しいことです。子ども達との学習も、同じようなことが言えます。

 子どもが何気なく発信している言葉に教師が気づかないと、また、子どもの高いレベルの発信に教師がついていけないと、学習を深める事ができません。同じように、フィールド観察でも、意味のある現象を拾い出すことができないと、観察になりません。一つの石を見ても、「石がある」としか言えない人と、「この石がここにあるということは・・・」と存在の意味を語れる人の違いによって、研究の深さが違います。

 フィールドサイエンスは、地質学は勿論、生物、気象、社会科学などもあり、さらに、教育や経済や産業などの研究も、フィールドを対象にしています。そこには、博学な知識と、関係性を捉える論理力、現場に長く身をおいて培った直感力、研究対象を冷静にかつ愛おしく見つめる心情、そして生き方としての哲学が、必要であると考えます。

 子どもの動きや発言や作品を少し見ただけで、その子の背景にある多くのことを語れる教師がいます。偉大です。単なる直感ではなく、経験に裏付けられた考察を常にしながら、学習は進められているのです。

 

<連絡>

▼3年

 秋分の日が過ぎました。今、太陽は真西に沈むので、自分の家から見た真西の位置を知っておくとよいでしょう。また、太陽の沈む位置を記録していくようにしましょう。家から見える山並みをデジカメで記録し、秋分の日からどのように日没の位置が変わっていくのか、記録してみましょう。

▼5年

 川の独自学習の交流をします。川の学習をしながら、秋の天気の動き(低気圧、高気圧の動き)も、調べます。台風は南から北へ動くのが分かりましたが、日本付近の台風以外の日常の天気の変化は、どのようになるのか、調べます。台風のいない時に、天気図の切り抜きを、一週間ほどしてみましょう。そこから、天気の変化について考えてみます。

▼6年

 呼吸の学習から、でんぷんの消化の実験へと進みます。体の中の内蔵を書いた本を持って来てください。自分の体のどこに、どんな臓器があるのか、資料と比べながら、学習を進めていきたいと思います。