一瞬の出会い 2010.2.15(月)

 

 わずか数分の学習が、新しい世界を開き、学びの階段をいくつも上るときがあります。これまで全く意識に無かった内容が、一気に流れ込んでくることもあります。

 「今日僕は、ニッケル水素電池を持って来ました。マンガン乾電池と違って、ここに1.2Vって書いています。」と、電気の学習のめあてで発表がありました。私は、1.2Vの方に興味が行ってくれるといいなあと思っていたのですが、「ニッケルって何ですか。」と、先にそちらにおたずねが出ました。直ぐに辞書を引いている子どもがいます。「私の辞書でニッケルを調べると、『元素記号Ni、原子番号28。銀白色の金属。展性、延性に富み、空気・水・アルカリなどに強く、強磁性を持つ。合金やめっきに用いることもある。』と書いてあります。」と発表します。続いて「理科事典の裏表紙にある周期表の28番にNiってあります。」「鉄、コバルトの次です。」と、理科事典の周期表でニッケルを見つける子どもがいます。理科事典を持っている子ども達が周期表を見ていると、次に「メッキってなんですか。」とおたずねが出ます。すかさず「私の辞書には『金属の薄い層を他の金属にかぶせること。金、銀、銅、ニッケル、クロムなどがよく使われる。』って書いています。」と学びがつながります。国語辞典や理科事典を使って、3年生が信じられない内容で進めています。

 理科学習の中のほんの数分の出来事ですが、こんな学び方をするときがあります。私も嬉しくなって、「実は奈良の大仏様もメッキされていたのですよね。」って子どもに振ってみると、「知ってる。今は銅の色が見えているけど、昔は金でメッキされていた。」「水銀と金を混ぜて塗っていた。」と、さすが奈良の子ども達は大仏様の調べ学習ができています。「水銀は体に悪くて、大仏様をメッキしたときたくさんの人が死んだのですよ。」と、私が付け加えると、「水銀は体温計に使っているのに。」と、ぶつぶつ言っている子どももいます。3年生になってから、学習でいろいろな金属が理科学習に出てきています。金、銀、銅、真鍮、鉄、鉛、ステンレス、アルミニウムそして、今回のニッケル、水銀です。電気の学習の次の、磁石の学習の素地も次第にできていっています。子ども達は、植物名や昆虫名を知るように、金属名も覚えていくようです。「先生、ニッケルは、磁石につくそうです。」という声があがりました。電気の学習の相互学習なのにと思いながらも、まあいいかと考え、「では、先生が持っているニッケルで確かめます。ああ、本当に磁石につきましたね。」「先生、私は今日、磁鉄鉱を持って来ています。これです。」「そんな鉱物、理科の学習の時に持って来ているの。すごいね。じゃあ、ニッケルのついでに磁石につくか確かめてみましょう。つきましたね。磁鉄鉱って磁石につくのですね。」「先生も、磁鉄鉱を持っているよ。では見せてあげましょう。島根県の『たたら海岸』の砂ですが、そこに磁石を入れてみると、ほれ、こんなにたくさん砂鉄がつきました。砂鉄っていうのは磁鉄鉱の小さな粒なんですよ。少し○○さんにも、この砂をわけてあげましょう。」「僕も、磁石で砂鉄探したことある。」「先生、どこの砂にも入っているのですか。」「たくさん入っている海岸の砂と少ない所がありますよ。日本各地に、砂鉄を多く含んでいることで有名な海岸がありますから、探してくださいね。先生は、島根県の小さな『たたら海岸』という所まで採集に行きました。」と、さらにどんどん話がそれてしまいます。

 「それではみなさん、ニッケル水素電池はどうなりましたか。」と聞き返すと、「この電池の周りがニッケルでできているのかな。」「中に水素が入っているのかなあ。」と言っています。「どんな仕組みになっているのかは、また研究しておいてね。」と、お願いをして相互学習を終えました。その後、10分ほど、独自学習の時間をとり、今の話し合いを調べ直したり、自分の課題を調べたりします。

 3年生と学んでいるように思えない15分間でした。LEDやモーターの学習の所なのに、ニッケルから、周期表、原子番号、メッキ、水銀、磁鉄鉱などの話になっていきました。全ての子どもが、これらの話の全部を理解する必要はないのですが、科学に興味を持つ窓口になるのではないかと思います。子どもの学習への興味は、どんな所にあるか分からないので、いろいろな窓を開けることが大切だと思っています。

 相互学習の後、LED、モーターを配り、豆電球との違いについて自分たちで調べ学習をしました。使い方を教えるのではなくて、発見的に学習を進めるのです。LEDの観察からします。豆電球と違って、フィラメントがありません。また、二本突き出ている針金の長さが違っています。豆電球とは違う点き方をする事は予想できますが、どのように乾電池につなぐと良いのかは、殆どの子どもたちは初めてのようです。

 最初、乾電池1個で、ほぼ全員が「つかない」と言っている中、一人二人と点灯できる人が出てきます。その子は、乾電池を2個使っています。その発見が波紋のように教室に広がっていきます。懸命に見て、早く点灯したい気持ちで一杯です。しかし、乾電池2個でも、すぐに点灯しません。赤いコードを+に、黒いコードを-につないだとき、点灯します。乾電池が2個必要、極性があるということが理解できた時、初めて全員が一斉に点灯させることができました。全員の気づきまで約5分。活気のある活動でした。

 次は、モーターも自由に乾電池につなげさせます。モーターは、乾電池1個につなぐと直ぐに回転するのですが、初めて回る瞬間を、自分で体験させることを大切にします。新しいものとの出会い、初めての体験は、一度しかできません。自分で一歩を踏みだし、自分で辿り着いた喜びは、かけがえのないものです。

 教師が教え過ぎず、子どもが発見的に、歓喜的に学習を進めることは、とても大切なことです。いい環境を作り、見守り、安全の確保だけをしていると、子どもはどんどん自分で学びを進めます。自分で進める中に能力が育ちます。

 

■ お知らせ ■

<3年>

 電気の通り道の学習をします。スイッチを入れた回路の学習をします。

<4年>

 水を温めたとき、冷やしたときの学習を進めています。湯気、水蒸気、結露、蒸発などの学習をします。

<5年>

 電磁石の学習をします。コイルを作りましょう。

<6年>

 地震と岩石の学習をします。時間を作って、ノートを綴じますので、3年生からの理科ノート、季節日記、フィールドノートを整理して、木工ボンドで貼り合わせておいてください。表紙を学校でつけます。

<科学G

 ダイコンやカブの収穫をして、自分たちで料理します。また、給食にも出してもらえるように、きれいに洗って準備します。