脳力を高める 2009.12.14(月)
40歳を過ぎると、一年に0.5%ずつ脳の細胞が減るらしいのです。脳には1000億個の細胞があるので、1年間で5億個ずつ減ることになります。1年間の5億個を365日、そして24時間で割っていくと、1分間に約1000個の割合で脳細胞は減っていく計算です。全く恐ろしいデータです。また、40歳から0.5%ずつ減っていくと、60歳では、約10%(1割)減るような計算にもなります。さらに、お酒、たばこの作用で、影響もあるようです。
また、若い人の脳細胞は30日で入れ替わると言われていて、新しい学び、新しい思考回路は30日間続けると少し身についていき、さらに学び続けるとその思考回路は太くなっていくようです。継続は力なりというのは、このあたりに根拠があると考えられています。
40歳を超えた人は、脳の細胞が減るのは仕方ないけれど、減らさない努力、減るのに逆らって回路を増やす努力が必要です。本を読む、話す、考えるなどの努力が大切であるようです。
次に、考える、思考する、ひらめく、ということはどういうことかと調べると、脳の側頭葉の記憶と、前頭葉のやる気とがつながることであると考えられています。記憶とやる気との関連が、思考するという作用で、その関連を常に付けようとする人が、思考力のある人、ひらめきのある人らしいのです。思考、ひらめきとは、多くの記憶から、いろいろなつながりを構成、再構成していく作用が高速にできることといえるようです。
また、脳は、細胞同士がコンピュータの配線のように直接つながっているのではなくて、脳内物質(ドーパミンやセロトニンなど)が細胞間の連絡する役目を果たすようです。携帯電話は、電波が強いほど伝達が確実になるように、脳内物質が多いほど、ものを考える力が強いようです。
以上のような、読書からの情報を元に、子ども達が学習するということについて考えてみましょう。
子ども達は、脳細胞を日々増やしながら、細胞間の関連を新たにつけて、どんどん新しい記憶、そして考える力を付けています。うらやましい限りです。この時に、自分の脳を使って考えることをしないと、脳力は高まらないということは当然わかることです。私たちの学校では、独自学習を大切にしています。また、学習にめあてを持つことも大切にします。黒板を写すだけ、先生の質問に答えるだけ、先生のパフォーマンスを楽しむだけの学習ではなくて、自分のめあてを持つことで、自分の脳を自分で使う宣言をします。そして、自分の力で側頭葉の経験と前頭葉の意欲をつないでいきながら学びを進めていきます。
また、研究開発指定研究校として取り組んでいるテーマ「論理的思考力の育成」についても、情報を吸収する側頭葉、思考する前頭葉とのつながりがキーワードになると考えられます。二つの耳と目から入る情報は主に側頭葉に入り(インプット)、前頭葉で思考して主に言葉として発する(アウトプット)という思考の流れがあるのではないかと考えられます。論理的思考は、この側頭葉と前頭葉の間で行われる思考回路のことであるといえるかもしれません。
次に、学級の学び方を考えてみましょう。脳の場合と同じように情報は多い方がよいと考えられます。ということは、学級全員が情報を発信している、発信しようとしている学級は、まず学びの準備ができている学級です。豊かな記憶としての側頭葉が準備できているといえます。それらの情報をつないでいくのが相互学習です。みんなで話し合いながら、試行錯誤して新しいつながりを探していくことが思考するということになります。ここに意欲というパワーが必要です。意欲は、わかる喜び、話し合う楽しさ、新しいことに出会う驚きが関係しそうです。このことから、学級での学びとは、まず情報を出し合う、互いの情報のつながりを試行錯誤する、新しいつながりを見いだし、言葉にしていくという過程だと思います。そのとき、情意・意欲の要素がそのつながりをより強く、強力に推し進めるのです。
このように考えていくと学習とはみんなで思考する練習であると考えられます。脳の中で行われるインプット、アウトプットを、見える形で集団で行っているのが学習です。さらに、黒板はその学習時間の学級脳が情報から思考した結果であり、道筋の記録です。思考過程を見える形に表しているのが学習時間です。
そうすると、黒板記録というのは、教師の思考方法がそのまま現れていることでもあるといえます。先生の頭の中の思考方法が、そのまま見える形として板書に現れていることになります。教えたいことだけを書いていて、子どもの発想や多様な情報を書いていない先生は、試行錯誤をさせない授業をしています。子どもたちは、黒板を写すだけの学習です。一方、子どもの広がりのある情報や知識がたくさん書かれている授業は、情報を元に、みんなで思考していく学習になっていて、子どもが脳を使っていた学習だといえます。
かつて私は「混沌から構造化」がとても大事ではないかと書いたことがありました。混沌とした情報からつながりを見つけていき、情報を構造化していく思考によって、何か新たな表現が生まれるのではないかという学習論と同じであるといえます。より広い混沌から学びを立ち上げていくことができる学級は、より力強い学習をする学級です。
最初に、40歳を過ぎると脳細胞が毎年0.5%減る話を書きました。さいわい、学校の先生は、学級の子ども達の40個の新鮮な脳から、毎日たくさんの情報を元に、一緒に考えることができるので幸せです。新たなひらめき、新たな発想、新たな表現が生まれる瞬間を、毎時間経験できます。学習は、脳の中で行われる思考を見える形に体験する時間です。教師の思考方法、思考力、情報の収集法が、子ども達の思考力の育成、脳力の育成に影響します。
参考図書
①「ひらめきの導火線」茂木健一郎
②「30歳からの『東大脳』のつくり方」石浦章一
■ お知らせ ■
<3年>
物の重さ比べの学習をします。同じ大きさの物の重さを天秤で比べます。今週のお天気が良い日に、冬至の太陽の動きの観測をします。
<4年>
月と星の観察記録をまとめます。また、秋のレポートを書きます。写真、資料などを準備してください。
<5年>
ものの溶け方の学習に入ります。食塩、ミョウバン、ホウ酸、砂糖など、水への溶解についていろいろな取り組みを進めます。
<6年>
月組は、紫キャベツの実験、星組は地層の学習に入ります。
<科学G>
学校周辺の自然観察に出かけます。デジカメを持ってこれる人は、持参してください。地衣類の研究、コケ類の研究、ロゼットの研究をしていきましょう。自由研究に発展していける人に育ってほしいです。