学びの風土を読む 2009.11.30(月)
先日、新潟の小学校に行きました。私の子ども達の理科学習にできるだけ迷惑をかけないように、木曜日の夜行列車で新潟に入ることにしました。木曜日の夜23時27分、大阪発きたぐに号に乗り、金曜日の朝、5時56分に直江津駅に着きました。駅で迎えていただく時間は午前8時と約束しましたので、およそ2時間あります。幸い、数日前からの厳しい寒波は少しゆるんでいて、大きなコートを着ていなくても歩ける気温です。そこで、駅のコインロッカーに手荷物を入れて、夜明け前の直江津の町を歩くことにしました。
駅から西の、海岸沿いへ出てみようと考えました。東の山の稜線が少し赤く染まり始めていますが、まだ、天頂には星が輝いています。がんぎのある直江津駅前商店街を抜け、直江津南小学校の前を通り、直江津橋を左に曲がると、関川沿いに出ます。東の山はさらに赤く色を増し、少しの間に、空半分が透き通ったコバルト色に変わってきています。朝のウォーキングをしている人、犬と散歩している人数人とすれ違いましたが、まだ、夜明け前の町は静かです。河口近くなので、川幅は100mほどもあります。薄明かりの中、漁船が数隻、漁に出かけていくのが見えます。500mほど川沿いに歩くと海に出ました。冬の激しい荒波は、今日の穏やかに波が寄せては返している様子からは想像できませんが、海岸に並ぶ家々の海側には、家を覆うように、木の板やコンクリートの風よけが造られています。
かつて、芭蕉が新潟の海辺の道を歩き、「荒海や佐渡に横たふ天の川」と読み、山下清が長岡の花火を見て描いた作品を思い出し、あこがれの地を歩いている幸せを感じることができました。海岸は砂丘地帯となり、道は高くなり低くなりうねりながら海に沿って続いていて、波打ち際から少し高まった所を通っています。市立水族博物館が見えてくる頃、山から太陽が昇り、一気に周囲が明るくなり海が輝き始めました。
水族博物館の前には、越後上越「天地人」博の会場がありました。私はNHKの大河ドラマを見ていなかったので内容は分からないのですが、次のように展示解説がありました。大河ドラマ「天地人」の主な舞台であり、直江兼続公が師と仰いだ上杉謙信公から「義」の精神を受け継ぎ、「愛」を掲げた越後上越の地で、「天地人」の世界を紹介するドラマ館を開催しています。「天地人」のスタジオセット再現や、直江兼続公・上杉謙信公、春日山城・御館の乱に関する展示、天地人シアターなどで「天地人」の世界へといざないます。会期平成 21 年 1 月 17 日(土) ~ 12 月 20 日(日)とありました。展示は近く終わってしまうようです。
海岸線を離れて直江津駅へと戻りました。約4キロほどの朝の町散歩で、少しだけ直江津の空気を感じることができました。漁港、関川、防風、砂丘、雁木、融雪道路、直江兼続、上杉謙信、朝から一気に情報が入ってきました。
駅の待合室近くの窓からは、線路のはるか先に、雪を頂いた妙高山、火打山、焼岳に朝日が照らされて白く輝いています。ちょうど数日前に、妙高山登山の番組に取り上げられていたことを思い出しました。かつて成層火山だった山頂が吹き飛ばされて、カルデラ内に中央火口丘が形成された形がよく分かります。来年の夏、登山したいと思いました。
8時に駅まで上越市立里公小学校の先生に車で迎えていただきました。駅で待っている間に、駅前を並んで登校する直江津南小学校の子ども達の姿を見ました。保護者がついていたり、信号の所に先生が立っていたりするわけでもないのですが、どのグループの子ども達も1列か2列に並んで信号を待ち、また、並んで信号を渡り学校に向かいます。二つのグループが合流しても上手に譲り合って広がることなく、私語をすることなく、普通に並んで学校へと向かっていきます。直江津の子ども達は、本当に穏やかに育てられていると感心しました。
さて、学校に到着すると校長先生が迎えて下さいました。玄関には、小黒板にお迎えの言葉が書かれてありました。玄関周りにはパンジーの苗が並べられていて、また廊下には、メダカなどの水槽がきれいに管理されています。教育は素敵な環境と、先生のやさしい心で育てると思っているのですが、それがすぐに見て取れます。2時間目は1年生の「ヤギの結婚パーティーについて」の話し合い、3時間目は、6年生の「冬げしき」を歌う学習を見せていただきました。
1年の学習は、ヤギの小屋の近くの大きなビニルハウスの中で始まりました。学習の最初、ヤギの結婚パーティーの話し合いにならないで、15分間も、男子のA君がエッチなことをするという女子からの訴えを取り上げた話し合いが続きました。和やかな学級の雰囲気が伝わってくるやりとりが続きます。聞いていてもちっともいやな気分にならないで、どんどん子ども達は学級のルール、社会のルールを学んでいることが伝わってきます。学習のヤギの結婚式の話し合いでは、ケーキをどうするか、どこでするのかについての話があり、きれいに掃除をしなければということになってしまい、自然発生的に小屋の周り、ハウスの中の掃除が始まってしまいました。生活の中に学習が、学習の中に生活がはまり込んだ素敵な時間を見せていただきました。
6年生は、音楽の学習です。二つのグループに分かれて、自分たちの工夫で、「冬げしき」という歌をどのように歌えばよいのかについて話し合い、その気づきを生かしてグループ練習をしていく学習でした。子ども同士で創り上げていく学習でした。グループに分かれても、静かに仲良く進められ、その話し合いの結果を楽譜に書き込んでいきました。ふざけたり、大声で話したり、男女分かれてしまったりというようなことがなく、家族のような6年生を感じました。
厳しい自然、豊かな自然の中で培われた、しなやかな人間性が感じられる子ども達でした。早朝の散歩で感じた直江津の印象が、そのまま今日の学習に重なったような気がしました。風土が人を育てます。
■ お知らせ ■
<3年>
物の重さ比べの学習をします。キッチンの秤を持ってきてください。家庭での取り組みと、学校の重さの学習とをつなぎます。
<4年>
水と空気の体積の膨張、収縮の学習から、固体(金属)の体積の変化について実験を通して、考えてみたいと思います。
<5年>
ものの溶け方の学習に入ります。食塩、ミョウバン、ホウ酸、砂糖など、水への溶解についていろいろな取り組みを進めます。
<6年>
発電、蓄電の学習に入っています。手回し発電機で発電したり、コンデンサーに蓄電したりして、電気をエネルギーの量として捉えています。
<科学G>
今週はありません。来週から、学校周辺の自然観察に出かけます。デジカメを持ってこれる人は、持参してください。地衣類の研究をしましょう。