子どもに学ぶ 2009.11.24(火)

 

 先生方が集まってする理科の研究会での会話です。

 「子ども達に考えさせる授業をしたいので、教科書は学習より先に見せないようにするため、教科書を集めています。みなさん(他の先生方)はどのようにしていますか。」というお尋ねがありました。研究授業(先生方の研修会)などの時は、答えが最初に出てくると困るので、見せないようにしているという意見があり、教科書を見せていない先生も他にもおられるようでした。

 私は、「教科書、参考書、塾での学び、親に教えてもらう等、子どもの情報はあらゆるところから得ていて当たり前という事実から学習を進めることが大切ではないか。」と言いました。教科書を読んで、それなりに理解してくれている子どもは実はすごい子どもです。日頃は、予習や自学をしなさいと言っておきながら、研究授業となると、子どもが先生より先に答えを知っていると授業を進めにくいので、教科書を見せないというのは、ちょっと考え方が違っていると思いました。

 次のような研究会の風景もありました。少し前、東京の小学校で見せていただいた授業では、黒板に子どもの意見を書かないで、事前に意見が書いてある画用紙を次々と貼っていく授業でした。みのもんたさんのニュース解説のように見えてしまいました。授業の基本的な考え方が違っていて、答えを伝える授業でした。黒板には、子どもの意見を書いてほしいものです。

 また、熟練の先生の授業でもよく見られるのですが、子どもの意見の取り上げ方についてです。予想の場面では、少し間違いやすい子どもの意見を採り上げて、まとめや結論の所では、賢い子どもの意見を採用するという進め方をします。一見すると、学習によって変容した姿を見せることでは効果的です。しかし、このような学習の進め方はよくないなと思います。私はあえて逆でもいいぐらいだと考えます。それは、予想やめあての所では、しっかり意見を持った子どもが思いっきり考えを述べたり発展的な課題を述べたりして、学習の可能性を広げる活動を大切にします。そして、まとめや結論の所では、間違いやすい子どもが、分かったことや感想を述べてほしいと考えています。

 我が校の学習は、子どもが授業を創ることを大切にします。教師が予測している内容と違う方向に向かっている意見も、ごまかさないでそのまま取り上げていくことが大切だと考えています。

 先週の火曜日、3年月組の学習の時、ゴムのついたプロペラが回る力で走る車を使って学習をしました。子ども達の学習のめあてでは、ゴムを1本、2本と増やしてみたい、巻き数を変えてみたい、巻き方を逆にすると反対に走るなど、順調に私が思っていたような予測が出てきました。その時、A君が「僕は家で車を走らせる実験をやってきたのですが、ゴム1本で50回、100回、150回、200回巻きで走らせて、200回巻きは、走る距離が少なくなってしまいます。」と言います。なぜそんなことを言うのか分からないまま、「もしかしたら、実験のミスかな」と、私は一瞬考えてしまいました。しかし、言った通り白板に書いておくことにしました。それから、集会室で実験を終えて、たまたま取り上げたB君のデータを、今日の実験結果として白板にグラフを書いてみました。そのとき、予想で重要だと思っていなかったA君が発表した「200回巻きだけ走る距離が伸びない」という結果になっていました。「えー。なんで。」という気持ちになってしまいました。そこで、子ども達のノートに書かれているグラフを見て回ると、5、6人のグラフが、200回巻きだけ増えていないのです。他の多くの子どものデータは、50、100、150、200回巻きとほぼ比例するように増えていました。一人だけのデータの200回巻きが減っているのだったらやはり実験ミスかなと思うのですが、5、6人、それも予想していてそのようになるというのは、何か理由がありそうです。

 理科学習の実験結果としては、ゴムのねじる回数が増えると、プロペラ車が走る距離が伸びるというのがよさそうですが、200回巻きが伸びないというのが気になります。

 理由をみんなで考えてみました。そうすると、予想の場面で、車の重さが重くなると走る距離が短くなるということを言っているC君の意見を見つけました。また、10円玉を貼り付けると、走る距離が伸びたと言っていたD君の意見も書いてありました。この二つの意見を検討したとき、C君の重くなると走る距離が短くなるのは納得したのですが、D君の10円玉を1枚貼ると距離が伸びたという意見には、「そんなこと本当にあるの? 20円、30円と増やしてやってみましたか。」と聞くと、それはやっていないと言います。D君の意見も、とりあえず書いてありました。この矛盾するような重さの問題と、200回巻きが伸びないということが関係しそうであると、突然、考察のところで関連してきました。

 たぶん、軽い車体の場合、200回巻きになると、プロペラが最初に高速で回るとき、タイヤの回転にすぐに伝わらないで、その場で滑ってしまうようです。そのため、150回巻きぐらいの時と同じぐらいしか進まないという現象が起こるようです。一方、車体の重さが一定以上ある場合、200回巻きの場合もタイヤが滑らないので、プロペラの回転が、走るエネルギーとして伝わるというようなことが起きていると考えられました。10円玉を貼ると、走る距離が伸びると言っていたD君の意見が、とても重要なものになってきました。3年の学習をしているのに、どきどきするような場面でした。子どもの意見は、ほんとうにどれも大切なんだと、つくづく考えさせられる場面でした。「200回巻きは距離が伸びない。」「10円玉を貼ると走る距離が伸びる。」という、ちょっと変かなと思う意見が、本当はとても重要な意味を示していて、ずっと後でつながってくるという素敵な体験をしました。

 このような話し合いを、理科の先生達は研修会で交換しています。子どもを育てるとはどういうことかを、考え合っています。

 

■ お知らせ ■

<3年>

 風やゴムのはたらきの学習を終えて、物の重さ比べへと学習を進めます。学級によって、進度が違ってきています。打ち合わせをしながら進めましょう。

<4年>

 水と空気の体積の膨張、収縮の違いを比べましょう。

<5年>

 川の地形について、話し合いながら、どのようにしてその地形ができるのか考えていきたいと思います。

<6年>

 発電、蓄電の学習に入っています。手回し発電機で発電したり、コンデンサーに蓄電したりして、電気をエネルギーの量として捉えています。

<科学G

 集会発表の練習をします。自分で取り組まなければならない準備は、それぞれ仕上げておいてください。昼休みなどを利用して、発表練習を仕上げます。