個の学びが大切 2009.11.16(月)
ポンッと音をたてて飛んでいく楽しい空気鉄砲の学習です。4年生の子ども達は、次のような素晴らしい個の追究の取り組みを見せてくれました。前々回の「こぎつねノート」にも書いたのですが、もう一度整理して書いてみたいと思います。
今回の空気鉄砲の独自学習では、これまでにない工夫のある取り組みをしてくれました。前玉をサツマイモ、ジャガイモ、ダイコン、キュウリと変えたり、乾いたディッシュと湿らせたティッシュで玉の飛び方を比べたりして、筒と玉の間の抵抗(摩擦)について、調べる取り組みです。また、ゆっくり押す、速く押すなどの動作の比較から、ゆっくり押すとポリウレタンの玉の隙間から空気がもれることに気がつきました。
さらに、筒の太さによって、玉の飛ぶ時の音の高さに違いがあること、押し縮められた空気が一気に出るとき煙のような物(霧)が見られる理由に迫ろうと考え続ける子どもがいました。音はパイプオルガンやいろいろな笛の種類に、煙は、雲ができる仕組み、冷蔵庫やエアコンが冷える仕組み調べにつながるといいなあと思いながら見守りました。
押し縮められた空気が急激に広がる時には、押し縮められていた空気の温度が下がり、その中の空気中の水蒸気が冷やされて霧(小さな水滴)になります。これを断熱膨張と言います。U君は、ゴム風船のゴムを一気に引き伸ばす時にも感じられることを発表していました。自らゴムを持ってきて、伸ばしては顔につける活動をしていました。
空気鉄砲、水鉄砲の学習は、空気は押し縮められて、水は押し縮められないことについて学ぶ単元ですが、その決められた学習以外の現象についての気づきが素晴らしいのです。これらは、塾でも習わない、参考書にも載っていない内容ですので、本当の思考力、本当の追究の力が問われるところです。聞いたこと、教えられたことを、記憶を辿って述べるのでない「新たな未知への探究力」です。このような内容は、発展的な学習内容なので、みんなが理解しなければならない性質のものではありませんが、それぞれの発見や、おうち実験の様子を交流し、相互に学べるようにしています。
玉の種類を変えるとき、いろいろな野菜で、飛び方の違いを比べる実験をしてくれた家庭がありました。子どもの学習のためにサツマイモ、ジャガイモ、ダイコン、キュウリなどを準備して、一緒に実験を楽しんでくださった母に、感謝します。もったいないからやめなさいと言ってしまった母もいます。実際、野菜の値段も分からない子ども達ですので、無駄にしてしまうことも予想がつきます。難しい判断の連続ですが、何が大切で、何が大切でないのか、日々の見極めは、母にかかっています。学校でも、限られた時間、限られた予算の取り組みです。今この活動を取り上げることは、必要か必要でないか、教師も刻々判断の連続です。その判断の連続の先に、結果としての子どもの育ちがあります。
ちなみに、科学分野の新たな実験や観察は、9つの失敗があって、初めて1つの成功があるとよく言われます。いろいろな取り組み、いろいろな失敗体験をしている子どもから、科学的な思考力は育つと思います。自分の気づきを追究していく学習は、塾の授業や科学館のびっくり実験では体験できません。「地道な失敗と、少しの成功と、たくさんの疑問を創る生活の中の実験(試行錯誤)」が大切だからです。
さて、4年生の理科は、空気や水を温めたとき、冷やしたときの変化を調べる学習へと進めています。この学習でも興味のある発想が示されました。
<物を温めたとき>
①パンの生地を温めて発酵させるとふくれる。
②餅を焼くとふくれる。
③空気を何かに入れて温めた時ふくれる。
<物を冷やしたとき>
①空気は冷やすと縮む。
②風船を液体窒素で冷やすと縮む。
③水は4℃までは縮むけれど、それ以下になると増えると聞いた。
④水は氷になると縮む。
⑤氷のかさは、水のかさより増えると聞いている。
⑥お椀のふたが取れなくなるのも関係すると思う。
⑦冷たいコップの周りに水滴がつくのは、周りの空気が縮んだからだと思う。
このように、子どもの生活の中には、ふくれる・縮むという現象は、本当にいろいろな場面であります。理科学習でいう空気や水がふくれる・縮むという現象は、その中の一部分でしかないと、子どもに教えられます。理科の教師は、空気や水の膨張・収縮だけを教えなければならないと思い込んでいますが、それ以外のふくれる・縮む現象もたくさんあることに視野を広げることが大切だと感じました。
学習は、学校の授業時間の学習と、授業時間以外の考え続ける時間があります。授業時間、集中して学習することは大切ですが、それ以上に、日頃ずっと考え続けることができる力はもっと大切です。理科ノートを自分で作る力、学校から出かけた遠足や観察コースを、子どもがリードしながら家族でもう一度出かけ直してみるのも自分の理科ノートを作るのと同じです。もう一度自分の力で行き直して、そして家族に説明することで、遠足の学びを確実な力にしていくことは、大切な学び方の方法です。
きつねTの理科教室では、子ども達の理科ノートは理科室で預かっています。子ども達は、理科の時間に書いて出して帰ります。そのため、家でもう一度振り返ってノートまとめをしたり、書き足したりできません。そこで、それぞれ家庭用のフィールドノートを持ってもらっていて、家庭で週に一回か二回、理科の時間を思い出して、学校の理科学習に連動した学習をしてほしいと思っています。学校の理科学習をそのままなぞってもいいし、発展的に自分の考えている実験を家庭でできる範囲でしてもいいのではないかと考えています。フィールドノートを見ると、その子の理科学習力がよく分かります。科学的な思考力、科学的な追究力がついてきている子どもは、学校の理科ノート以上のノートを作り始めています。遠足の行き直し、ノートの作り直し、だれでもできる学習の仕方で、真の学習力をつけましょう。
■ お知らせ ■
<3年>
風やゴムのはたらきの学習を終えて、物の重さ比べへと学習を進めます。学級によって、進度が違ってきています。打ち合わせをしながら進めましょう。
<4年>
空気(気体)を暖めたとき冷やした時の様子はおおよそ分かったので、次は水(液体)について調べていきましょう。
<5年>
川の地形について、話し合いながら、どのようにしてその地形ができるのか考えていきたいと思います。
<6年>
中和、紫キャベツの学習、そして、次の学習、「発電、蓄電」の学習へと進みたいと考えています。
<科学G>
集会発表の練習をします。自分で取り組まなければならない準備は、それぞれ仕上げておいてください。昼休みなどを利用して、発表練習をしましょう。