幼小一貫 2009.11.9(月)
今週の金曜日、文部科学省の研究開発指定学校として公開研究発表会を持ちます。保護者の皆様にもその趣旨を理解していただくために、少し説明したいと思います。
我が校はこれまで、いろいろなコンクールや研究指定などにあまり関わらないで、独自路線で長くやってきたのですが、最近の学校評価、附属統合などの流れの中で、手を挙げて発信せざるを終えなくなってきました。これまで培ってきた子どもの学びの伝統を、いかに時代の中で崩れることなく表現していくかが、課題だと考えました。全国の附属や研究学校から応募されている研究指定校に選ばれるのはかなりの競争率があり難しいのですが、昨年までの三年間、そして、今年からの三年間、二回続けて研究指定を受けることができました。このチャンスを有効に活用し、全国に「奈良の学習法」を伝えられるように取り組みたいと考えています。
研究開発の課題は「幼小一貫教育において『読解と表現を〈つなぐ〉論理的思考力』を育成する教育課程の研究開発」です。いかめしい課題になっていますが、子どもがものを考えるというのは、どのような発達をしていくのかを、3歳から11歳の子どもがいる幼稚園と小学校が協同して研究していこうというものです。
まず、このような一貫した発達をどの領域で研究していくとよいのか考えました。私たちの学校は、しごと学習に、歴史的に取り組んできているので、その中の「奈良関連研究」の部分に焦点を当てて9年間の発達を見ていくことにしました。身の回りの生活理解から、奈良さんぽ、奈良の産業、自然、歴史研究へと子ども達の研究が進むであろう領域で、子どもの思考力の発達を捉えます。しごと学習の時間全体と同等ではない時間設定をしていますので、「しごと学習の中の奈良関連研究の時間」を、仮に「ひらめきの時間」という名前をつけて取り組むことにしました。
どのような分野で、子ども研究をしていくのかは決定しました。では、「読解と表現を<つなぐ>論理的思考力」というのはいったいどのようなことを意味しているのでしょうか。論理学に関して学問的に理解している教師は、私たちの中には殆どいないのですが、子ども達の日頃の会話の中で、また、学習の発表の中で子ども達がどのように物事を考え、理解しているかは、たくさんの情報を持っています。子ども理解の観点で考え方を整理して、その発達を調べ、そこから適切な9年間の学習課程を創っていきたいと思います。
子どもの論理の発達は、情報の収集の仕方(読解の仕方)、その構成の仕方(つなぎ方)、表現の仕方に分けて捉えたいと考えています。
情報の収集は、読解という言葉に置き換えます。事物現象の「なに」(事物)を「どのように」(状況)見るのかを、詳しく調べてみたいと思います。
構成の仕方は、論理的な思考の本体の部分です。得た情報の「事物と事物」「事物と状況」「状況と状況」などを比較しながら関係(因果関係、空間関係、時間関係、等)を考えていくことだと捉えます。子ども達は、目の前の特定の情報を、自分なりに構成していきながら、奇妙な、子どもらしい発想をしていきます。大人の常識を越えた構成の仕方に、教師も新たな課題を発見したり、新鮮な世界観を見つけたりすることが度々あります。私たちは、奇妙な、子どもらしい発想を、大切に分析したいと思います。
表現とは、感じや思い、考えた結果を、伝えることとします。体、感情、言葉、文章、絵、図、音楽など、感じたこと、考えたこと、思ったことを、いろいろな表現として見ることができます。小さな子ども達では、自然に発する表現を分析し、年齢が上がるにしたがい意図的な表現から分析することができると考えます。子どもの心や頭の中の論理的思考を、そこから読み取るようにしていきます。
私たちの学校には、「めあてーふりかえり」「おたずねーこたえ」という、学びの文化があります。これは、「読解ー思考ー表現」に、直接対応はしませんが、思考の状況を表現させる手立てとしてとても有効だと考えます。
以上のような考えに立ち、私たちは今、5歳(年長)から、1年生、2年生のつながりを大切に見ていくことで新しい教育課程の可能性を探ろうとしています。先行教育、英才教育というような取り組みではなくて、年齢に合った、子どもの自発的な学びを追究させることで、これまでの幼稚園、小学校の教育の枠にとらわれない新たな学びのあり方を考えています。
今回、キツネTが取り組むのは、「ひらめき」の時間の奈良関連の取り組みではありませんが、異年齢の子ども間で、学びの伝達がどのようになされるのかの可能性を見ようと思っています。3年生は「風やゴムのはたらき」の単元の学びを、子ども達の理解を通して、遊びの感性を通して、学びがどのように伝達されるのかを見ていきたいと思います。これは、一つの例であって、他にも、磁石、光(鏡・虫眼鏡)、空気鉄砲、電気、物を溶かす、虫の飼育、植物栽培など、遊びを通して伝達される子ども文化としての科学の可能性の探究です。小さい頃から、遊びの中で科学を体験することは、真の理科好きを育てます。学びの連続性も強くなります。子どもが遊びを通してどのように情報を受け取り、どのように理解して、どのように表現していくのかを見ていきながら、学びの可能性の広がり、あり方を探りたいと思います。
今年からの3年間の研究開発学校指定に合わせて、幼小一貫教育校構想(初等学校構想)も進めています。本年度の幼稚園の入園者は、すべて小学校に進学するシステムに変更しています。入園保護者もその趣旨を理解して「一貫教育校としての良さ」に期待して入園してきています。9年間の学びが子ども同士の中で伝達されることは、一貫教育校の一つの良さになります。教師がガンガン教え込むような特訓幼稚園、英才教育幼稚園ではなくて、学びの文化が、子どもの中で脈々と伝わる学校にしていきたいと考えます。先生は温かく見守り、子どもの学習力、活動力を引き出していくような、「学びの文化」を担う子どもの育成を目指します。
■ お知らせ ■
<3年>
プロペラをつけたゴムの車は、どんな走り方をするでしょう。
<4年>
水と空気の性質を、温めたり冷やしたりして、調べていきます。温めると空気はどうなるのか、考えてください。
<5年>
流れる水の働きの学習で、川を一番上流から、下流まで見て、侵食や運搬や堆積作用を考えたり、地形について調べてみたりしたいと思います。
<6年>
星組は、中和について学習をします。月組は、紫キャベツを使います。
<科学G>
劇をするグループは、劇の練習をします。科学的な内容をうまく入れてください。水溶液の酸性アルカリ性を発表するグループの人は、実験をします。秋の自然発表のグループの人は、模造紙を書いておいてください。科学Gの集会発表は、11月27日です。