現象の関係 2009.11.2(月)

 

 5年星組で川の学習をしているときのことです。「雨が降ると水量が増えるのですが、水の速さも増しています。『水量』と『速さ』は関係があるのですか。」ということが話題になりました。この話題は、少し前に紹介しました4年生の「星の『明るさ』と『色』は関係があるのか」という課題と同じような印象を持ちました。

 教科書では、星には色の違いや明るさの違いがあることに気付かせること、また、雨が降ると川の水量が増し、水の流れも速くなることが書いてあります。現象に気付かせることが、学習のめあてになっているのですが、それらがどのように関係しているのかについては、これまで学習中に考えてこなかったなと、今更ながら反省させられます。30年間も理科の教師をしてきたのに、初めて子どもに気付かされることが、毎日あります。

 川の学習では、水量が増えると流れる水が早くなるわけを考えてみました。教科書の写真や、家の近くの大和川支流の体験を思い出しながらの考察です。「流れの速さは山の斜面の角度と関係します」と、最初の子どもが言いました。当然のことですが、雨が降ると山の斜面の角度が増えるわけではありません。そこで、次に「大水の時と水が少ない時を比べると、大水の時は川幅いっぱいに真っ直ぐ流れていて、水が少ない時は、くねくね曲がりながら流れています。真っ直ぐ流れると、速く流れると思います。」と意見を言いました。

 私はハッとさせられました。川の流れ方は、真っ直ぐな所と曲がっている所では、流れる速さは違うことはこれまで川の観察で何度も取り上げてきたのですが、川が曲がっている、川が真っ直ぐと、水量が少ない、多いとを、関係づけて考えたことがなかったからです。

 次に、「川の水が増えると水の体積が重くなって、それが押すから流れが速くなる。」という意見が出され、さらに、「家の近くの川では水が少ない時は、流れを止めるような段になっていて、水が多くなるとそれを乗り越えるように流れるので、水の流れが速くなると思います。」と続きます。どれも素晴らしい意見だなあと思いました。そして、「水が少ないときは、上流の写真を見ていると大きな岩がたくさんあって、それにぶつかりながら流れています。しかし、水が増えると、岩の殆どは水の中になってしまって、岩にぶつからない水が速く流れると思います。」と、合計4つの考えを出してきました。これまでは、ばらばらな事実としての観察をしてきていたのですが、「水量と速さは関係あるのか」という話し合いのテーマを持つことで、関係がつながって見えてきました。いい学習問題を持つことは、とても大切だと、考えさせられました。

 このように、子ども達の話し合いが、本当に活発な学級の場合は、事実の発表とおたずねが、上手に組み合わされて、学習問題が連続的に出されてきます。ふと思い浮かぶ疑問点が、遠慮なく出される学級に育てるのが一番ですが、なかなか事実や記憶の発表だけをする子ども達が多いのが現実です。

 そこで、このような学級の場合、子ども達が発表している内容を板書していき、その中のキーワードに丸を付けて、それらの間の関係に目が行くようにします。キーワード間に、関係があるのかないのか、共通点・差異点は何かを考えてみるのです。そうすると、ばらばらな現象として見えていたことが、意外と関係のあることがわかってきます。関係を論理的に理解する一つの方法が見えてきました。

 また、4年生の学習のことです。空気鉄砲の学習をしているとき、「空気の量よりも、押す早さの方が、飛ぶ距離には関係していると思います。」という意見が出されました。これは、とてもおもしろい課題でした。

 キツネTが、ゆっくりゆっくり後ろ玉を押すと、前玉が飛ばないで、後ろ玉とくっついてしまいました。押す早さは、飛ぶ距離に関係しそうです。だからといって、空気の量も関係しているようです。

 次に、玉の種類をいろいろ変えてみるとどうなるかの取り組みをしてきてくれた子どもの発表がありました。「さつまいも、じゃがいも、だいこん、キュウリなどで玉をつくって飛ばすと、ザラザラしている玉はよく飛んで、ぬるぬるしている玉は、滑って落ちて飛ばなかった。」と発表がありました。他にも「紙をぬらして玉にするとよく飛んで、紙をぬらさないで玉にすると、空気が抜けて飛ばなかった。」「洗剤を前玉につけて後ろ玉を押すと滑ってすぐに落ちてしまった。後ろ玉につけたときは変わりなく飛んだ。」など、玉の性質も飛ぶ距離に関係あるようです。空気鉄砲が飛ぶ原理は、かなり複雑な作用が合わさって飛んでいることが見えてきました。玉の摩擦力、玉の気密性、空気の圧縮の速度、空気の量などが、微妙に関連しあって、よく飛ぶ空気鉄砲になっているようです。

 「空気鉄砲から玉が飛ぶとき、煙が見えました。その煙は何ですか。」という疑問がありました。「玉がすれて煙が出る」「空気が縮まると白く見える」などが出されますが、なかなか煙の正体が見えてきません。「温度の変化が関係すると聞いたことがあります」と、実験教室の知識を持ち込んでくれた人がいました。しかし、温度が高いのか低いのかも、分かりません。「ゴム風船のゴムを伸ばすと冷たく感じて、伸びたゴムが急激に縮まる時温度が上がるように感じるようです。」と、圧縮、減圧の時の温度変化について体験を言ってくれる子どももいます。この煙については、まだ今のところ解決できていません。

 フィールドノートから「空気鉄砲に玉を詰めて、その筒を冷水と湯につけて玉を飛ばすと、飛ぶ距離が違ってくる。」という実験を持ち込んでくれた子どもがいました。みんなで取り組んでみたのですが、数値的に捉える方法がうまく準備できず、結果が感覚になって混乱して終わりました。

 空気鉄砲について、まじめに飛ぶ原理を追究すると、こんなにいろいろな要素があることが見えてきました。空気は押し縮められて、水は押し縮められないということだけに気がつくための素材ではありませんでした。こんなに多面的な要素が見えてきたのは初めてです。

 

■ お知らせ ■

<3年>

 今週も、ゴムで動く車を走らせて、ゴムの力、ゴムのはたらきについて、考えます。プロペラをつけたゴムの車は、どんな走り方をするでしょう。

<4年>

 水と空気の性質調べで、次は、水や空気を押したときから、水や空気の温度を変えたときの性質の違いについて、考えてみたいと思います。

<5年>

 流れる水の働きの学習で、川を一番上流から、下流まで見て、侵食や運搬や堆積作用を考えたり、地形について調べてみたりしたいと思います。

<6年>

 星組は、酸アルカリと金属について学習を進めます。月組は、中和について学習を進めましょう。

<科学G

 発表のテーマとグループを決めているので、発表の内容を考えていきます。準備物を考えて、6年生を中心に自分たちで進めてくださいね。応援はします。