学びの伝承 2009.10.13(火)

 

 我が校は、2年後の初等教育学校(仮称)設立を目指して、新たな指導過程のあり方を探っています。園児と児童が共に負担になる交流活動ではなくて、3歳から11歳の9年間の子ども達が、生活と学びの文化を日常の活動の中で自律的に創っていく学びのあり方の開発が大切であると思います。ここでは、高学年の理科学習における学びの伝承について示し、今後の園児と児童の交流の可能性について考えていきたいと思います。

 

1.学びの伝承

 理科専科教諭になって5年目です。専科以前は学級担任として理科学習はもちろん、各領域の学習を学級の子どもを対象に進めてきました。学級担任の時は、自分の学級の様子しか見えないのですが、専科教諭は3年生から6年生まで理科学習を教えるので、理科学習の全体が見えてきました。そうすると、本校の殆どの子ども達は、私の理科学習だけを学んで卒業していくことが自分自身の中で明らかになってきました。こぎつね小学校の子ども達は、きつねTの指導の理科が全てであることになるので、とても責任が大きいと自覚しました。

 5年間も理科の専科教諭をしていると、毎年の全ての子どもに対して、毎回私が一から学びを立ち上げていく学習は、とても効率が悪いのではないかと思うようになってきました。学習も子どもの中で伝承されるのではないかと、考えるようになりました。理科の学習文化を創り、先輩の学びを後輩が学ぶ仕組みを作ると、子どもの学び文化の伝承が確立できそうです。

 

2.レポート力を伝える

 今年の夏休み明けの理科学習は、3年~6年の全学年、レポートを書く取り組みをしました。我が校の多くの学級では、家で親のお手伝いの元、レポートを書いて来ていますが、理科学習では、学習時間内に書くことにしています。3年と5年生は「夏休みのフィールドノートから研究をまとめよう」、4年生は「夏の季節新聞を書こう」、6年生は「貝の標本をレポートにまとめよう」という課題で、二時間程で書きあげることにしました。レポートはどの学年も、学期にほぼ一度ずつ取り組んでいるので、子ども達はそろそろ慣れてきています。レポートを書くとき、理科室前の廊下や理科室内に、自分よりも上学年のレポートや一学期に書いた素敵なレポートを掲示しておき、それを参考にしながら書くという取り組みです。子ども達の感想を、次に掲載します。

○3年U男 研究レポートをして、ぼくは4年や6年のレポートを見て、ツバメがとんでいる絵や 表をあんなにうまくかけなかった。僕達より研究の細かさや見抜く力が全然ちがった。来年は、もっと書く内容をこまかくして、思ったことはもっといっぱい書きたいです。

○3年K女 今日は、初めてレポートを書きました。初めて一人で書きとげました。めあてどおりに、読んだだけでわかるようになっていると思います。やはり4年生6年生には追いつけなかったけど、今度は絵などもつけて、みんなが見てひきつけられるようにしたいです。

○5年S女 きょう、私も負けないぞという気持ちでレポートを書きました。やっぱり6年生はすごくて、色といい、表といい、かんぺきでした。さすがに6年生だと思いました。私もけっこうがんばったので、きれいにできたと思います。

 

3.標本、作品の展示

 夏休み明けには、7月中ごろに5、6年生が一緒に行く白浜臨海学習で採集した、貝や海草の標本の展示をします。6年生は昨年に続いて2回目ですので、かなり工夫がなされています。5年生は、6年生の標本の整理の仕方を見て、来年に備えます。保護者も熱心な方は、写真を撮りにきます。ついでに、夏休み明けに書いた3~6年生のレポートも写真撮影している方もいます。

 また、今年の4年生の夏休みの課題は、LED工作を出しました。80人の子ども達が工夫して作ってきた作品を、理科室前の廊下に展示しておくと、3年生の児童は、「来年4年生になったら、LEDの勉強をするのが楽しみだ。」と言いながら、懸命に見ています。

 子ども達や保護者から、工作やレポートの展示物を見ながら、「次の学年ではこんなことをするんだ。」と見通しを持ったり、「さすがに6年生はすごいレポートを書いている。」「3年生でもすごいレポートを書く子どもがいるんだ。」と、感心したりしている声が聞こえてきます。

 現在、理科の学びの文化は、理科室前に、学習の作品や研究物、レポートを学年ごとに常に展示することで、伝え、高め合っていると考えています。静的な展示ではありますが、学びの拠点になってきていると思います。

 

4.新しい学びの伝承のあり方

 次に、新しい学びの伝承として、動的な伝承はどうあればよいかという観点で考えてみたいと思います。理科学習には、面白い実験や観察がたくさんあります。それを、自分よりも低学年の子ども達に遊びを通して伝えることで、理科での学びを広げたり、理科好きをつくったりする取り組みができるのではないかと考えました。

 今回の、「風やゴムで動くおもちゃであそぼう」という取り組みはその一歩で、理科での学びの楽しかった取り組みを、子どもの遊び心を通して、自分よりも下の子どもに伝える取り組みです。3年生は、学びの確認、深め、広がりにつながり、園児は、遊びの活動に新しい視点を取り入れるという、双方に利点があると考えます。

 このような学習は、風やゴムの車以外にも、空気てっぽう、がい骨を見る、ものの重さ調べ、電気を使ったおもちゃ、磁石遊び、発電あそび、虫取り、栽培など、いろいろな場面があると考えられます。子どもが子どもに伝えることの意義をしっかり整理して、計画的に学習時間内に組み込むようにしていくと、学習文化の伝承ができると考えました。

 

5.学びの伝承と論理的思考力

 学びの伝承には、「おたずねーおこたえ」「めあてーふりかえり」が大切です。今回の研究開発の中心的な取り組み、「見通しを持つこと、質疑をすること、ふりかえること、」であり、さらには、「読解と表現をつなぐ思考のあり方」を、ここでも真正面から分析していく必要があります。学びの伝承での読解とは何か、表現とは何か、そして、その間に、どのような思考がはたらくのかを、見極めていきたいと思います。

 

おわりに

 私達の学校は、自律の風土を守り、学びの伝承、生活の伝統を創造し続けていくことを大切にしたいと思います。これまで大正時代から脈々と培われてきた子ども主体の精神を、さらに論理的な思考力という観点で精査し、より確実な自律力を育む教育へと発展させたいと考えます。今回ここで考察しました、学びの静的、動的な伝承のあり方を、子ども主体の学び文化をつくる取り組みの一つと考え、さらによりよい可能性を追究したいと思います。

 

■ お知らせ ■

<3年>

 新指導要領の新しい学習単元「風やゴムの力」の学習を進めています。今週もう一度、風で動く車の学習をしましょう。そして、次週、ゴムの力を使った車つくりへと進みます。ゴム鉄砲なども面白そうです。

<4年>

 星座の学習、星の動きの学習を進めます。星座、星の学習を進めながら、「空気と水の学習」へと入っていきます。

<5年>

 台風レポートの考察を書きます。天気図、台風の動きの地図、気圧の変化、大きさの変化など結果の部分をしっかりと仕上げてきてください。また、新聞記事などから、災害関係の写真なども切り抜いて貼っておいてください。

<6年>

 酸・アルカリの学習を進めています。鉄、銅、アルミニウムと、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液との反応を見ます。今週は運動会練習で学習は出来ませんね。6月は、台風、運動会練習と、2回続けて授業ができませんね。