話すこと書くこと 2009.9.28(月)
1.「めあて」を話すこと
理科学習は、それぞれが「今日の学習のめあて」を持つことから始めます。「今日は月の勉強をするので、友達の意見をよく聞いて、しっかり考えたいと思います。」と、最初の子どもが発表しました。新学期当初に、「このような『めあて』は、本当の自分の目当てではありません。こぎつね小学校の良くない形の、仕方なく言う時の、決まり文句なのですよ。」と、お話をします。しかし、休み明けなどの、ふと気が抜ける時、また、このような「めあて」を言う子どもが出てきます。
このめあては、「今日はサッカーをするので、友達の様子を良く見て、しっかり頑張りたいと思います。」「今日は割り算をするので、先生の話をよく聞いて、しっかり考えたいと思います。」と言うような、その場を単に乗り越えるための、頭を使わない型式の言い方なのです。
学級のけいこやしごとの学習では、このような「めあて」でも許されているのでしょうか。学習に自ら関わっていこうとする意欲が感じられない、上滑りの言い方です。
そこで、「もっと具体的に、自分は月の動きの観測をして、どんなことを思ったのか、考えたのか、何が分かったのかを、言えばよいのですよ。」と、もう一度、言い直させます。そうすると、「私は、満月の色の変化が気になっていました。東の空に出た時の色はオレンジ色で、上に動いてくるとだんだん黄色くなってきました。夕日が当たっているからかなと思いました。」と、自分の気になることを発表できました。続く子ども達も、「月には海と陸があるという話が、前回出ていて、それはクレーターの数の違いだと分かりました。子ども新聞には、月に水があると書いていて、この海のことと関係があるのかなと思います。」と言います。また次の子どもは、「三日月は、夕方6時頃見えて9時頃沈んだので、3時間で沈むので、出ている時間は短いなと思いました。」などと、次々と危なそうな意見が続きます。聞いている私は、どきどきします。
2.「めあて」から相互学習へ
以上のように「めあて」を数人発表していくと、さらに付け足し意見があったり、反対意見が出たりして、めあての発表が議論になってきます。そこで、黒板には[相互学習]というカードを貼って、自分の気になることについてどんどん話し合いを進めます。参考書を調べたり、独自学習ノートの観察から発表したり、辞書を調べたりしながら、意見が深まり、広がります。ある程度、議論が出尽くすと、それまでに、どんな内容が出てきているのか、幾つかに整理をします。先生がしたり、子ども達にしてもらったりします。
そして、その整理された課題に対して、短く[独自学習]の時間を取ります。意見の発表はしないで、自分なりに、思考の整理や、資料調べをして、ノートまとめをしながら、独自で考える時間を取ります。
独自学習の後、「実験」または「観察」をします。一応、教師が事前に準備した実験や、計画をした観察があるのですが、子ども達の「めあて」からつながる「相互学習」「独自学習」に関連させるように、実験や観察を登場させるようにします。学びのドラマの中に、うまく位置付く時は、本当に劇的に、学習が進みます。勿論、子どもの議論の方が進んでいて、教師の準備が追いつかないときも度々あり、その場合は、急遽、実験や観察を変更するのは、よくあることです。
話し合いで学習を進める「めあて」から続く「相互学習」の時、自分の意見を具体的に発表するには、独自学習が十分に出来ていることが大切です。フィールドノートの充実が、我が校の学習の基本になってきます。言い換えれば、独自学習のできる子どもを育てる教育を目指しています。
3.詳しく書く
9月の半ば過ぎ、「この前、セミの声を聞いた。」という発表がありました。セミが9月に入ってまだ鳴いていることを疑問に思った私は、「えっ。本当?」と思わず言ってしまいました。そこで、もっと詳しく話す、もっと具体的に伝えることを目的に、どのようにすると具体的になるのか、考えました。
まず「この前」というのは、9月何日なのか。セミは、どんな声で鳴いていたのか。どこで、何時ごろなのか。また、お天気はどんな様子だったのか。と、いうようなことが大切になってきます。それらを入れて、具体的に言うようにしてもらいました。「9月13日の日曜日、富雄の○○公園で、お昼頃、カナカナカナという鳴き声が聞こえました。お天気は晴れていて、あまり暑くない気温でした。」というような記録発表になると、信頼性も、データとしての価値も出てきます。セミの種類はヒグラシかな。アブラゼミやクマゼミではないことが分かります。私が住む大阪の町の中では、クマゼミが殆どで、それらは8月の末から声を聞いたことがありませんでした。そこで、まだ、セミが鳴いているとなると、とても疑問に思ってしまったのです。場所は、奈良公園なのか、住宅地なのか、山沿いの公園なのかも、問題ですが、地名が具体的に入るとだいたいの自然の様子が想像できます。当日の天気、気温も大切になります。そこで、フィールドノートの一行目には、いつも、気温と天気を書くようにしているのです。
続く子どもは、「9月20日の日曜日、僕の家、あやめ池の近くで、茶色のカマキリが死んでいるのを見ました。大きさは8cmぐらいでした。車にひかれたような様子がないので、なぜ、死んでいたのかなと思いました。天気は晴れでしたが、朝の8時ごろで、少し涼しい気温でした。」というような発表がありました。
このように詳しく発表をしてくれると、茶色のカマキリって、なぜ緑ではないのか、カマキリは色を変化させるのか、種類が緑と茶色では違うのかと話し合いが続き、また、病気で死んだのではないか、寒くなってきているので死んだと思うなどの話し合いができます。
フィールドノートの記録は、天気、気温、時刻がまず必要です。続いて、場所、周りのより詳しい環境、書きたい中心にする例えば生物、大きさ、色、動き、何をしているのか、スケッチなどがあればいい記録です。花の場合は匂い、昆虫の場合は鳴き声なども記録できるとよいと思います。
連続した観察記録では、このような詳しい記録と共に、前回の観察との違いも、大切な観点になります。違いは何かを、大きさ、形、色、状態などの観点で変化を記述していきます。
フィールドサイエンスをしている科学者、民俗学者は、何をいかに記録するかで、その人の研究の価値が決まります。記録の取れない人は、フィールドサイエンスができません。
■ お知らせ ■
<3年>
曽爾高原の観察のまとめをします。また、曽爾のまとめのあと、新しい3年の学習「風やゴムで動くおもちゃ」の学習に入ります。
<4年>
月の動きの観測結果を、きちんとまとめていきます。満月、下弦、三日月、上弦の四つの月の動きの記録をまとめてもらいます。次は、星座の学習、星の動きの学習に進めます。
<5年>
「人の誕生②」の学習をします。人体の誕生の学習に合わせて、いろいろな動物の誕生についても考えます。
<6年>
酸・アルカリの学習に入ります。基本的な独自学習を進めておいてください。身の回りの液体で、○○酸という物質を、成分表記から探しておいてください。いろんな酸があることがわかります。
<科学G>
新しい後期グループが始まります。F君がリーダーです。どんなグループ活動にしてくれるか、期待しています。