観察するとは 2009.6.15(月)

 

1.事実の記録

 4年生がツバメ新聞を書きました。昨年も素晴らしいなあと思っていましたが、今年の4年生も、昨年に負けず頑張った観察記録を作ってくれました。

 掲示されているレポートを見て、どんなところが素晴らしいのかを見ていくと、観察の事実を日付と時刻で記録しながら正確に書いている子どもが多いということです。日記のような、その日、その時の、日常の観察の記録であって、そこに、写真やスケッチが添えられているのです。

 記録は、できるだけ連続していることが大切です。日記と同じように、観察も何気ない日々の生活のこと、周囲の変化のことを書き溜めていくことで、成長、変化、性質、特性が見えてくるものです。書いている時はなんでもない出来事でも、後になって他の事とつながってくることがあります。推理小説の、小さな事実をつないでいきながら、なぞが深まり、そして解決へのきっかけになっていくのとよく似ています。

 最近は、デジタルカメラが発達して、簡単に写真が撮れるようになりました。携帯電話にもカメラがついていて、いつでも、どこでもすぐに撮影可能です。文章と写真をうまく組み合わせると、事実の記録に有効です。これは、テレビドラマで見るような、事件現場で警察官が証拠写真をたくさん撮っているのに似ています。

 さらにレポートを見ていると、理科の観察でもインタビューを上手に活用している人もいます。ツバメの巣が作られている家の方に、昨年と今年の違い、最近のツバメの様子で気が付いたことについて聞き取りをして記録をしています。ちょっと民俗学研究の手法もあるようです。

 このように見てくると、理科でいう事実の記録とは、日記のように、推理小説のように、そして警察の現場検証のように、さらに民俗学のように記録していくと、多様な観点で観察ができることになります。

 さらに、理科の観察記録で大切にしていることは、数値の記録として表すことです。長さ、個数、重さ、温度など、数値で測定できる内容を記録して、グラフ化することで見えてくる変化もあります。ツバメのようになかなか近づけないものは測定が難しいのですが、ここでは、測定以外に、視覚化できるものとして、地図に巣の位置を表現している子どもがいました。どんな場所に巣が多いのか、どれくらいの数の巣が近くにあるのかが見えてきます。

 文章、写真、スケッチ、数値、地図での表現、これらが理科における事実の記録の観点です。学級で発表する「自由研究」に取り組むとき、また、理科のフィールドノートの観察など、このようなことを頭においておくと観察が進みますね。

 おそらく、理科だけでなくて、しごと学習、社会科の調べ学習、野外学習の記録も、この手法が参考になると思います。

 

2.結果を読む

 記録の結果から何をどのように読み取るとよいのでしょうか。日記のように文章で書かれた結果や、写真、スケッチなどからは、なかなかその中に「違い」や「変化」を見つけるのが難しい場合があります。そこで、「違い」や「変化」を見つけるためには、表にまとめるようにするとよいでしょう。

 「違い」は、二つのものを比較していきながら、違っている視点を見つけるということです。反対に、似ている所を見つけることも大切なことです。比較していくと、分類の視点、変化の視点を引き出すことができます。

 また、「変化」の様子を見つけるには、二つの観点で変化を見ていくようにします。ヒマワリの観察だったら、気温の変化と背の高さ、また、背の高さと葉の枚数、日照時間と成長など、二つの観点の変化を見ていきます。

 このように、「違い」と「変化」を、自然観察に適応していくと、自然の状況を科学的に捉えることが出来るようになります。

 

3.観察を表現する

 観察を表現するには、理科では「一枚レポート」という方法をとっています。指定された大きさの用紙一枚に、収めるように書きます。たくさんの枚数に書くのもいいのですが、発表を前提にすると、一枚に要点をまとめるようにするほうが、読んでもらえる、見てもらえるように思います。基になるデータは、フィールドノートにたくさんあるけれど、その中から、重要なことを選んで、テーマに合わせてまとめるようにしたとき、いいレポートが出来ます。

 「一枚レポート」の表現には、自分の研究の課題をしっかり書くことが大切です。これは、しごと学習や、社会科などのけいこ学習のレポート作りの時も一緒です。課題、テーマの無いレポートはよくありません。

 次に、自分の調べたことを中心に表現を進めます。人の書いたもの、人の意見を書く場合は、どんな資料、どんな本、誰から聞いたなどをきちんと書くことが大切です。引用文献、調べた辞書、事典、参考書、図書を書くようにします。自分の考えや自分の資料と、人の考えや資料を分ける必要があります。自由研究などを見ていると、本を丸写しするだけ、資料を紹介するだけのレポートがあります。私が実際に調べたデータから、こんなことを考えた、こんなことが分かった、こんなことが考えられるというようなレポートが魅力的です。

 自然観察、社会観察、町探検では、その土地ごとに、また調べている対象ごとに、特徴的なできごとやエピソードがあるので、自分なりのデータを得ることができます。それを元に、自分の考えを書くようにします。また、物理実験、化学実験では、子ども達が出来る範囲は限られているのですが、自分の扱っている実際的な実験条件では、こんなことが言える、また、実際の理想の結果からは、こんなズレがあるというような誤差について考察していきます。そうすると、子どもが行った実験状況における法則がみえてきます。

 観察や実験の失敗が、実は面白い考察につながることが良くあります。科学の発展も多くの失敗の積み上げからです。

 

■ お知らせ ■

<3年>

 ヒマワリの観察、太陽の学習を進めます。今週の理科の学習時間と、来週の月曜日の一日で、夏至の太陽の動きを記録します。

<4年>

 電気の働きの学習を進めます。LEDや光電池や発電機も活用します。

<5年>

 木津川の学習のまとめをしたいと思います。流れる水の働きを、現地の観察やサンプルの石から読み取りたいと思います。

<6年>

 晴れていれば、光合成の観察をします。曇っていれば、人体の骨から内臓の学習を進めます。

<科学グループ>

 二酸化炭素の実験の続きをします。植物の光合成、マグネシウムの燃焼、温暖化ガスの確かめなどに取り組みましょう。

<大学>

 画用紙に貼り付けて見る花粉の観察と、澱粉の観察を顕微鏡でします。