ノート指導 2009.6.1(月)
1.ノートを書くこと
最近、東大生のノートは美しいという本が出ています。ノートは、書く人の頭の中の様子を反映していると考えられます。小学生の子ども達のノートを見ていても、きちんと書ける子どもの学力は、おおよそ高いようです。いろいろ物知りでも、ノートが書けない子どもは頭の中の整理がついていませんので、まだまだ今後の努力が必要です。
今年の3年生理科の最初の時間、ノートが書けないと、途中でメソメソ泣いてしまった子どもがいました。7ミリマスに文字が書けない、文章が出てこない、追いつかないという理由のようです。これまで、このような子ども達は、「まあ、仕方ないか」と置いてこられたのでしょうか。できないことは、個性やその子らしさではありません。書けるようにするのが教育です。二回目からは、少しずつ書くようになってきています。
2.子どもの事実
私は、授業の指導や講演に呼ばれて行くとき、重いのですが子どものノートをもって行きます。各学年から数冊ずつ鞄に入れて持って行き、ノートの実際の様子を見てもらいます。
子どものノートは、教師の学習の進め方、子どもの学び方、考え方など、全てが読み取れますので、私は、子どものノートから、私の学習の進め方を読み取ってもらおうと考えます。ノートには、数ヶ月分の学習の積み上げが書かれています。そのため、教師や子どもが手を抜いた時間があると、すぐに見えてしまいます。連続した学びの、緊張した足跡の集積です。
レポートも学習の事実といえます。各学級前に掲示してあるレポートや学習作品は、先生と子どもの学びの事実です。学びの価値観、学ぶ目的、子どもの学ぶ態度、学習力、学級の状況など、いろいろなことが掲示物から読み取れます。
学校の指導にレポートを持っていく時は、学級全員分の40枚を持って行きます。こわさはあるのですが、学級全員分のレポートを見せることで、こぎつね小学校の理科学習の事実を見てもらいます。
3.ノートの育て方
ノートは、自由に書かせるのではありません。形式、書式はかなり決めて、それに従って自分の考えや事実を書いていくことができるように育てています。
ノートの記述には、お作法があると思います。
最初の一行目には、月日曜日天気気温、そして筆者名を書きます。どの学習、どんな記録、メモでも、日時のない記録は、意味がありません。これはとても大切な習慣です。
次に、我が校の学習の場合、子どもが進める学習を目指しているので、これから取り組む学習には、学習前にテーマを決めておく必要があります。そこで、「今日の学習のテーマ」を書きます。これは、前時間に予告をしていたもので、先生が書く場合が多いと思います。単元名、小単元名などを書くことになります。
そして、続く「学習のめあて」は、子ども自身がそれぞれに書きます。一応の目安は、3年生は3行、6年生は6行程度書くようにしています。勿論、もっと多く書く子どももいます。この「学習のめあて」は、今日の学習でしていきたいこと、学んでみたいこと、家で少し調べてきたこと、発表してみたいことなどを書きます。現在の自分の学習状況、学習計画、今日の学習に対する要望などに当たります。それらを個々人がアピールすることで、今日の学習の方向性をみんなで探ります。
次に、独自学習の時間を少しだけ入れる場合がよくあります。個人のめあてに従って、持ち込んできた資料、本、図鑑などから、また、自分が持ち込んできた植物や昆虫の観察を始める時間です。自分で学習を立ち上げるための独自学習です。家ではなかなか難しい独自学習ですが、みんながしていると、子どもの力でできるようになってきます。
次に、その独自学習を発表する時間を少しとって、そこから、みんなで活動する実験や観察に入っていきます。みんなで活動する実験や観察は、「学習のめあて」「独自学習」の中にすでに提案されていて、その中から大切な取り組みを相互学習として取り上げて、全員で探究発展させるようにします。
この「実験、観察」には、テーマ、予想、方法、結果、考察、結論という順に書き進める作法があります。これは、科学の探究の方法に沿っています。
最後に、「学習の振り返り」を書いて、学習を終えます。以上のようなお作法に従って、ノートの質をそれぞれに高めていくように育てていきます。
4.ノートで成長
ノートは、7ミリマスを一行空けで書かせるようにしています。
3年生は、4月からこの書式で書き始めて、まだまだ、一行空けを忘れたり、色鉛筆の使い方がよくなかったり、平仮名だらけのノートを書いています。「めあて」や「振り返り」を3行と言うと、その通り3行、中には、2行と3行目に一文字という状況です。自分を高めるためにノートを使っていません。それが、4年生、5年生、6年生と成長してくると、「学習のめあて」がとても豊かになってきます。6年生は6行と言っていても、1ページほど書く子どもも増えてきます。「学習のめあて」で既に学習を始めているのです。
また、理科は図、スケッチ、表、グラフがとても大切ですが、それらがきれいに整理されたものになってきます。頭の中が論理的に整理されてきている証拠です。当然、定規を使って、表やグラフは描かれるのですが、その厳密さ、手を抜かない正確な取り組み方も、高学年は身につけてきます。6年生は、二時間続きの学習で、実験や観察をしながら6~8ページほど書き進めます。素晴らしい書く力の成長です。自分なりの資料・本・論文を学習に持ち込み、辞書片手でノートを書き進めています。「資料活用」と「自身の実験観察結果の整理」と「考察」ができる、理科を学ぶ人(学生)に成長していくための基礎基本を、ノートを通して育てていると考えます。
■ お知らせ ■
<3年>
ヒマワリの観察をします。また、日向と日陰の比較、温度測定をします。
<4年>
骨と筋肉の学習を進めます。今週は、背骨の学習から筋肉の学習へと進めていきたいと思います。
<5年>
メダカの餌であるプランクトンの観察をします。また、植物の成長条件の途中経過を見たいと思います。
<6年>
植物の呼吸や光合成、動物の体のつくりや呼吸や栄養について学習を進めていき、植物と動物の関係について考えます。
<科学グループ>
集会発表を終えたので、いろいろな楽しい実験や観察をしていきます。今週は顕微鏡を使った観察をします。
<大学>
3年の「磁石」「乾電池と豆電球」の研究授業について、グループごとの打ち合わせをします。模擬授業が次週に取り組めるように、指導案の検討をします。