学習の要件 2009.5.25(月)

 

1.自ら学習を創る子ども

 「どのように学ぶか」という学習法について考えてみたいと思います。

 私達のこぎつね小学校では、「子ども自らの学習力の育成」を目指しています。大学の学習方法とよく似ていて、教授の講義と並行しながら、図書室や研究室で、自分自身で学びを進める学生を育てるということです。小学校でも可能であることを証明しているのが、我が校の学習法です。

 私達の学習法は、世界で一番学力があると言われているフィンランドの学習方法と似ている所があります。まず、教えるということを最優先しないで、子どもに考えさせ、調べさせ、議論させることを大切にしています。どのような学習場面においても、知識を与えることではなくて、思考力をつけることを目指しています。

 このような学習を進めるには、学習の「準備」や「環境」や「修行」が必要です。

 

2.学習の準備

 子どもがそれぞれの思いや意欲に合わせて学習を自由に進めるには、幾つかの準備が必要です。私の場合、まず、ノートの書式を揃えてもらうことです。280人もの子ども達の学習を見ていくので、書式を揃えていないと、子どもの取り組みのよさ、考え方の深まり、意欲の状況を捉えるのが大変なのです。さらに学習中の理科ノートと、独自学習用のフィールドノートがあるので、フィールドノートを全員が提出すると560冊のノートを、毎週見ることになります。ちょっと大変な量です。しかし、教師が頑張れば、子どもも頑張ってくれます。

 学習時間には、全員が発表するように、全学級の子どもの名前カードを作っています。手を挙げて発表すると、意見を黒板に書いて名前カードを貼っていきます。カードが手元に残った、手を挙げていない子どもには、最後の感想や振り返りの場面に指名して、一度でも声を出してもらうように心がけています。一週間に一度の学習ですので、全員の顔を見て、お話を聞く場面を大切にしています。丁度、学級の朝の会と同じ、気持ちの共有、気持ちの確かめをしています。

 毎週ノートを見て、Good,VeryGoodと書いたり、顔を見て全員の話を聞いたりしていると、理科学習が終わった後、少し残って、キツネTに一言お話をして帰る子どもが増えてきています。そこで、子どもの声が聞きやすいように、学習が終わった時は、子どもの椅子に座り、子どもの目の高さにいるようにしています。数人、多い時には10人ぐらいが、こちょこちょと、いろいろな話をして、それから「有難う御座いました」と元気よく挨拶をしてそれぞれの教室に帰っていきます。気持ちのいい教室の出方です。私もうれしくなって、同じように「有難う御座いました」と、言ってしまいます。本当にいい追究を有難うという気持ちで一杯だからです。

 

3.学習の環境

 理科教室は、子どもが自分で学びを作る場所です。図書室であって、自分の実験室であって、研究室であるのです。決して、教える場所ではないのです。

 あるときは、図書室になります。図書室と言っても、子ども用の科学の本を揃えることとは考えていません。子どもが、自分で必要図書や資料を持ち込んで、自学する図書室です。理科室で本を準備すると、子どもの学習の広がりがなくなります。教師に頼らないで、自分で広い世界に資料をもとめて探すことが大切だと考えています。しかし、子どものお尋ねに答えられるように、教師用の図鑑、参考書、辞書は最高のものを揃えるようにしています。

 最近、図書ボランティアの人と一緒に、6種類ほどの大きな辞書を図書室に揃えました。理科以外のときにも、独自学習に使えるように、図書室に置きました。また、少し古いものですが、百科事典も準備しました。辞書、事典は、自ら学習を進める子どもにとっては、基本的な道具です。国語や社会や自由研究など、多くの場面で使って欲しいと思います。

 理科室前には、3年生の学習を支えるために、モンシロチョウ、アゲハ、アオスジアゲハの幼虫を飼育しています。また、春に取り組んだ押し花を展示しています。今年は、50種を越えるようなたくさんの押し花に挑戦した人も多くいました。4年生は、「春の自然レポート」、「ツバメレポート」と、素晴らしいレポートを2枚も書いたので、近く掲示します。5年生は、メダカの飼育をしています。5星の子ども達がお世話に来ています。最初に採卵したメダカの卵からは、稚魚が誕生しています。

 学習には、素敵な環境が必要です。学びの環境を、丁寧に作っていきたいと思っています。

 

4.学習の修行

 自ら学ぶ子どもになるための修行は、自分でノートを書き進められること、自分で資料や本を読みとることができることが大切だと考えます。また、自分で考えることが好きな子どもであることも重要です。

 一方、子どもが自律した学習を支えるための教師の修行は、子どもの声で学習が始まり、子どもの声で学習が終わるように、教師が話し過ぎない、指示をし過ぎないことが大切です。また、教師は、学習中の立つ位置が大切です。学習の始まり、議論の時、実験観察をしている時、ノートを書いている時、終わりの時、どこに立つのかで、先生と子どもの学びの深まりが違ってきます。宗教団体ではないのですが、授業中に、いかに一人ひとりの子どもに気を送り続けるかということが大切なのです。

 さらに子どもは、もっと本を読む修行をして欲しいと思います。私は、日々、本を買い続けています。情報が豊かにあるときは、自信を持って、子どもの前に立つことができます。自分の内と、興味のある外の世界とを常にシンクロさせておくことだと考えています。

 「学びの準備」、「学びの環境」、「学びの修行」が揃って、「自ら学ぶ子どもの育成」が少しだけ可能になります。難しいものです。

 

 ■ お知らせ ■

<3年>

 チョウの幼虫の観察、ヒマワリの成長の観察をします。チョウの資料、双子葉植物の発芽成長の資料を持ってきてください。

<4年>

 骨と筋肉の学習を進めます。フィールドノートに独自学習を進めてください。

<5年>

 メダカの学習を続けます。メダカの資料を集めてください。また、植物の成長条件の実験に入ります。独自学習をしておいてください。

<6年>

 酸素と二酸化炭素の学習を進めます。それぞれの気体の性質を調べておいてください。

<科学グループ>

 5月29日(金)は科学グループの集会発表です。「白浜臨海合宿に行こう」というテーマで発表します。

<大学>

 3年の「磁石」「乾電池と豆電球」の教材研究をします。磁場の研究、回路の研究をします。