独自学習や自由研究 2009.5.18(月)

 

1.インターネットを使う

 独自学習を見ていると、インターネットからの情報を持ってきて、それを写して学習としてしまう人がいます。まずはインターネットの問題点とよさについて考えてみたいと思います。

 まず、インターネットに流れている個人が発信している情報は、その領域について専門に研究している人が書いていない場合があるということです。間違っていたり、他の人の著書を丸写ししていたりします。一つの情報源として見ることができる大人の場合はよいのですが、子どもはインターネットの活用には慎重さが必要です。

 一方、インターネットのよさもたくさんあります。公式の所が出している情報は信頼できるので、積極的に活用していきたいと思います。私は博物館や資料館や図書館へよく出かけるのですが、それらの場所、開館時間、展示説明などは、インターネットから得るようにしています。また、天文台、水族館、役所などのホームページも有用です。海外でも、NASAや大きな博物館、大学が素晴らしい情報を発信しています。宇宙の写真や化石の写真を見ているだけでも楽しくなります。

 

2.複数の図鑑、辞書を使う

 情報はいくつかの情報源から得るようにしてほしいと思います。例えば「イチョウ」を調べるにしても、数冊の図鑑の説明を付き合わせてみることが大切です。一つの図鑑は、イチョウの進化のことが書いていて、他の図鑑は海外の分布に触れていて、もう一つの図鑑はギンナンの実の食用について詳しく書いています。これは、図鑑の著者の専門が違うので、解説も違っているのです。また、同じことを書いていると、新しく図鑑を出す必要がないので、自分の図鑑の独自性を出すためにも、これまでに書かれていない内容を盛り込んでいるのです。

 このことは、言葉をあつかっている辞書の場合も同じです。一つの言葉を、広辞苑、大辞林、国語大辞典、例解辞典、類語辞典などで調べるだけでも、それぞれ違ったことが書かれていることが分かります。

 そこで、5年の「メダカの誕生」について独自学習を始めるには、まず国語辞典、そしていろいろな百科事典、インターネット、淡水魚図鑑、理科事典、メダカの専門書などを調べるということです。独自学習は、このような複数の資料から、広く考えを集めたり、違いを比べたりすることから、研究を始めることが大切です。いろいろな情報を調べていると、正解は一つでないということが見えてきます。

 

3.情報を創る

 4年生が「ツバメレポート」を書きました。3月の末からフィールドノートに調査してきたことを、「一枚レポート」に書きました。今回は、自分が実際に調べた情報がたくさんあるので、本からの情報ではなくて、調べたことを整理して考察しています。

 富雄駅前のツバメ、西大寺駅のクリーニング屋さんのツバメ、奈良の自分の家のガレージのツバメは、私だけの情報です。プロの研究者が調べていることはまずないので、私の家の近くのツバメの事実を書き残すことは、私だけの研究の始まりです。3月27日に初めてツバメを見かけたこと、巣作りの様子、卵の数、子育ての様子など、「奈良の私の家の近くのツバメ観察」は、研究者と比べると不十分な観察でも、私の家のツバメの事実は、他のだれも知らない「私だけの情報」なのです。これが、辞書や図鑑や論文で公表されている事実と違っていると、新発見につながります。研究とはそういうところから始まります。

 5年のメダカの研究について、考えてみましょう。先に書いたように、メダカについて辞書、図鑑、著書、水族館で調べた独自学習をしたとします。とても物知りになり、メダカについて全て分かったような気になります。そして、そのことを模造紙にまとめると、立派な自由研究に見えます。しかし、理科の学習は、ツバメの所でも書いたように、「私の飼っている私のメダカの研究」が大切なのです。何月ごろ(水温?)から卵を産み出すのか、一日いくつ卵を産むのか、そのままにしておくと卵を食べてしまうのか、体長どれくらいから卵を産むのか、卵は全て孵化するのか、水温と孵化するまでの日数はどのような関係にあるのかなど、ツバメの観察と同じように、「私のメダカ研究」ができます。メダカの場合は、水温を変えたり、水槽に入れる雄・雌の数を変えたりして、比較実験ができます。

 3年のチョウの幼虫研究、4年のツバメ研究、5年のメダカ研究と、つながっているのか分かりますね。前の学年の時に培った観察の方法を生かしたり、また、育つ条件や環境を変える比較研究に取り組んだりして、生き物観察に取り組んでほしいと思います。

 

4.情報を「使う」と「創る」

 公立校の授業研究に出かけると、生活科や総合的な学習や自由研究などでは、情報の一面だけに取り組んでいる場合があります。本や博物館などで調べた情報を模造紙にまとめて報告している場合。そして、事前情報を殆ど調べないで野外学習に出て、成果の少ない調査や研究をしている場合です。このことは、我が校の「しごと」学習、「けいこ」学習でも言えることで、本やインターネットで調べた報告だけになっていたり、また、現地には行っているけれど事前調査はなく、内容の乏しい報告になっていたりする場合があります。

 情報には、調べる側面と創る側面があることが分かりましたね。そこで、ものごとを探究していくには、まず、辞書、事典、著書など、少し努力すれば集められる、できるだけ多くの人(多くの本)からの情報を得ることが大切だと考えています。

 次に、実際に飼育したり、現地に行って実物を見たり、聞き取り調査をしたり、サンプルを集めて比較したりして、自分の情報を創ることが大切だと思います。

 独自学習や自由研究に悩んでいる人は、少し取り組みの仕方が見えたでしょうか。事前資料調査と実際の実行の研究の両面が大切であるということです。

 

 ■ お知らせ ■

<3年>

 チョウの幼虫の観察と、ヒマワリの成長の観察をしていきます。チョウの幼虫を持ってきてください。フィールドノートには、チョウの成長について、観察を続けてください。

<4年>

 骨と筋肉の学習に入ります。資料を集めておいてください。

<5年>

 メダカの卵の育ちを観察します。また、先週実験を始めた発芽の条件を調べる実験の結果を調べ、成長条件の実験を始めます。

 フィールドノートには、いろいろな食品や種の中のデンプン調べをしてみてください。ヨウ素液は、うがい薬が代用できます。

<6年>

 燃焼と空気の変化について学習を進めます。酸素の発生をします。

<科学グループ>

 集会発表の練習。

<大学>

 指導案の書き方と、模擬授業に向けての指導計画を立てます。