学習の始め方 2009.3.9(月)
1.「テーマ」と「めあて」
「毎時間の学習をどのように始めるのですか」と、若い先生からお尋ねされることがあります。ここでは、学習の始め方について考えてみたいと思います。
ひつとの方法として、「今日の学習はどこからでしたか?」と、子ども達にとぼけて聞きながら、前回の学習の思い出しを、上手にされているベテランの先生がいます。でも、毎回、毎回使える方法ではありません。
多くは、「えーーと、教科書の○○ページを開いて、では、そこを読んでいこうか。」とか、「では、今日の学習は、○○をしますので、しっかりノート書きながら理解してね。」というような、学習の始め方をされているのではないでしょうか。
そこで、まず「始め方」以前の、「学習」について考えたいと思います。
個人が主体的に学ぶ学習には、「テーマ」と「めあて」があると考えます。これは、研究論文では、課題と仮説、課題と課題設定の理由、みたいなことに対応するのではないかと思います。また、身近なところの遠足で考えると、「生駒山登山」がテーマで、「春の植物観察」「体力作り」「グループの助け合いを大切に」などが学習のめあてに当たると考えます。
生駒山登山というテーマは、既に決められているので、よほどのことがない限り変わることはありません。大切なのは「学習のめあて」です。子ども自体がめあてを持っていないと、「ただ登らされてしんどかった」だけとなり、させられる体験になってしまいます。めあてを「春の植物を見る」なら、植物図鑑を持って行ったり、押し花を作るために植物採集をしたり、デジタルカメラで撮影したりと、準備が必要です。めあてを持てば、登山のしんどさは、それほど問題にはならないのです。
めあては、一人ひとり違っていてもよいのです。しかし、私は、話し合って、共通のめあても持つようにするとよいのではないかと考えます。特に、「けいこの学習」では、協同的に学ぶ共通のめあてと、個人のこだわりのめあての二つを持つことが大切です。
2.「めあて」の元
めあては、どこから生まれてくるのかについて考えます。
めあては、学習のテーマについて子どもがどれくらい独自学習できているかで、その深さが違ってきます。深く独自学習をしていない子、その場で考えた子どものよくあるめあては、「今日は、サッカーをするので、一生懸命頑張りたいと思います。」「今日は分数をするので、間違わないように勉強したいと思います。」「今日は実験をするので、先生の注意をよく聞いてけがのないように頑張りたいと思います」等等。「今日は○○をするので、頑張って○○の勉強をしたいと思います。」の常套句を言います。これは、テーマを言い直しているだけで、個人の疑問や、調べてみたいことや、深めたいことなどを含んだ「切実なめあて」には行き着いていないのです。
「めあて」は、独自学習の延長線上にあると考えます。独自学習は、私達のこぎつね小学校では、基本的な学びです。本来、独自学習を継続していくだけで、相互学習は極端に少なくてもよいのではないかとも考えられます。独自学習の連続的発展を学びの基本に置いています。
独自学習をしていると、一人では解決できないこと、みんなで考え合いたいことが出てきます。また、みんなに発表したいこと、自慢したいことができてきます。この時、学習のめあてと独自学習からの発信がつながります。
これは、遠足でも一緒で、「東大寺の大仏様」を見に行くときも、独自学習をしていると、見るべき所、調べてみたい所が定まっているので、意味のある遠足になっていくのです。
しかし、独自学習は、先行学習ではありません。予習ではなくて、自分の研究や学習を、自分で始めるということです。学習とは、本来、独自学習なのです。学校でも、独自学習をします。家でもします。資料を読んでまとめたり、自分の考えを深めたり、疑問点を整理したり、実験観察をしたりします。自分への集中力と自学力です。
授業中、ノートを書かない、隣の人と話し続けている人は、独自学習力が育っていない人です。一人になって、集中して独自学習ができない人です。
独自学習をしていると、
①自分の考えが持てているので、主体的に学習に関わることができる。
②友達の独自学習のよさを理解できる。
③実験や観察では、いろんな失敗をしているので、実験観察の難しさを理解している。
④適切な資料や参考書を自分で探して、使いこなせるように育ってきている。
等、のよさが見られます。
独自学習で取り組んだ内容から「今日の学習のめあて」を発表することができる子どもは、独自学習を連続発展させられるように育ってきている子どもです。
3.学びの構造化
学習の始まり方の話に戻りましょう。では、めあての発表から、どうするのかと言えば、「これから取り組む学習の構造化」をしていきます。
独自学習で進められ深められた個人の学びの構造と、より多くの子どもの「めあての構造」は、多様性、階層性においてかなり違いがあります。この広がりや深まりの違いを知ることが、学びの第一歩なのです。学習を始めるチャンスは、毎時間あります。いつ、本気で学習を始めるのかは、その人次第です。
最近、子ども達に、また見学に来られた先生方によく言うことは、「ノートはその人の頭の中の様子を示していて、授業の黒板は先生の頭の中を示している」ということです。
教えたい先生は、教えることばかり書いています。考えさせたい先生は、問題点を整理しながら書きます。子どもと一緒に学習を創りたい先生は、子どもの考えを構造化して書きます。空っぽの人は、真っ白です。
学びの構造の見えるノート作り、黒板作りをしていくことが、学習の始め方の大切な視点なのでしょう。
■ お知らせ ■
<3年>
・磁石の学習に入りました。磁石の働きについて学習をしていきます。磁石につく物・つかない物、磁石の極、南北の方位を指す性質など。
<4年>
・氷、水、水蒸気の学習をします。水の三態変化の様子をみます。
<5年>
・ものの溶け方の学習をします。溶け方の違い、濾過、結晶作りと、学習を進めます。5月は、温度による溶け方の違いを、実験で調べます。5星は、結晶のできるわけを実験で調べます。
<フィールドノート>
フィールドノートを始めて一年が過ぎました。3年生の皆さんが一番頑張って取り組んでいました。
頑張って取り組んだ成果は、必ずどこかで現れて来ると確信しています。
教えてもらう学習ではなくて、自分で考え、工夫して、観察実験から学ぶ学習を続けてもらいたいと思います。