「学ぶ」を考える 2009.3.2(月)

 

1.学ぶということの大切さ

 学校の学習は、思い出作りや、仲間作りを第一義の目的にしているのではありません。個人がいかに「学ぶ力を身につけるか」ということを目指しています。そのために、あらゆる学習場面で、子ども達の育つ環境を考え、一人ひとりの子どもが自分自身に向かい合って取り組みを進められるようにしています。

 例えば、後期科学グループの子ども達の「活動のふりかえり」を見ると、

○金属を酸で溶かしたときに出る水素を使った実験

○ダイコンや柚子を育てて、それを販売した体験

○巨大シャボン玉を作った楽しい活動

○コンデンサに電気を蓄電して電車を走らせた実験

○岩石を磨いた体験 など、

子どもによって取り上げている内容は違っているのですが、このように多様な学びの場を用意します。

 他には、朝の掃除の時に取り組んだ、庭木の剪定に興味を持ったとか、サクラソウやパンジーやノースポールやチューリップを植えた体験も、楽しかったと書いています。また、温室の植物の水やりで、冬の植物栽培に興味を持った子どももいます。立派に、蘭が花芽をつけて、ハイビスカスも冬を越しています。

 ちなみに、今年の中等教育学校の入学試験の面接では、「小学校の理科実験で心に残ったことは何ですか」と、受験生の6年生は聞かれたようでした。理科は、キツネTの全責任なので、問題を聞いてどきっとしました。科学グループの子ども達は、理科学習以外の、科学グループの実験についても言っていたようでした。

 朝の掃除の時間、庭木の剪定に取り組んでいるこぎつねがいます。「明日は、脚立を準備して、少しだけ高い場所の枝も切りましょう」と、連絡をしました。私(キツネT)は、集会室の後ろに置いてある脚立を使うように指示をしたのですが、Y君は聞き違えて、家の脚立を朝から母が持ってきてくれました。普通なら、「先生、何を考えているのですか。どうして、脚立なんか、持っていく必要があるのですか。非常識だ。」と電話でお叱りを受ける所ですが、わざわざ母が持って来てくれました。本当に、微笑ましい聞き違いだと思いました。Y君の母の温かさに感謝です。子どもの一生の思い出の一つにもなる、楽しいデキゴトでした。ちなみに、Y君は、家のお庭の剪定にも興味を持ってしまって、ハサミを持ち出して、枝を切っていることを、母との立ち話で聞くことができました。

 母の温かさで、子どもは柔らかく育つんだなと、思いました。

 剪定という学びは、本来小学校にはないのですが、枝の剪定をしながら、植物の成長について、いろいろ学ぶことができました。私も多くを学びました。また、木々の成長を気にして見るようにもなりました。

 子ども達は、このように、保護者が思ってもいないような場面で育っています。

 

2.科学者のような探究

 次は、実験について考えてみます。

 理科の学習は、実験、または観察を中心にして学習を進めているのですが、その実験や観察は、意外と難しいものなのです。

 本来実験とは、何度も何度も失敗を繰り返しながら、一歩一歩進めていくものをさします。実験を進めていく上では、素材の選定、変化する条件、周りの環境が、どのようなバランスであるのかが見えなくて、何が原因で実験がうまくいかないのかを、順次確かめていきます。変化する条件が、いくつあるか分からないのが普通です。何度も試行錯誤しながら、一つ一つ発見していきます。「ああ、そうだったのかあ」と、一つのことが分かっても、また、また二つ分からないことが増えるというのが普通です。このようなことは、少し前に書きました、ソニーの研究者も言っておられました。

 教科書に書かれてある実験は、過去より何度も繰り返し取り組まれた結果、失敗しにくいような素材や条件を満たし、器具の選定や環境設定などが充分に分かっているものです。教科書の実験は、これまでの先陣の先生方が繰り返し実証してきた、文化の伝承なのです。

 今、我が校の子ども達は、フィールドノートに、新たな素材や新たな実験方法、身の回りの素材で実験を進めています。また、子どもなりに自然の中に課題を見つけて、独自の観察を進めています。そうなると、科学者、技術者、研究者が、日々の研究の中で苦労して実験を進めている状況と同じように、理科学習もなってきています。素材の質、条件・変数、環境などを、研究者として未知から考える必要が出てきているのです。このことは実は、とても素晴らしいことなのです。

 フィールドノートでの取り組み発表で、最近の理科教室での子ども達の学習は、とても楽しくなっています。反対に、教師は、とても大変になってきています。

 何がとても楽しいのかというと、教師の思いもつかない発想の実験をしてきてくれるからです。理科の先生を長くしているキツネTも、度々初めてのことに出会うことがあるからです。「そんな方法があったんだ」「へえ、そうなんだ」と、驚きの連続です。

 また、何が大変かというと、その新たな実験を、理科室で再現できるかどうかというドキドキ感です。素材、器具が直ぐに準備できるかということです。これは、嬉しい大変です。

 こうなると、理科室は、「学びの工房」でなければいけなくなりました。また、どんな注文にも対応できる、工房でなければいけません。子ども達が持ち込む発想に応えられるように、いろいろな道具や器具や素材を揃えています。急な注文、思いも寄らない願いに対応できる学びの工房(理科室)に、日々、変化していくように努力しています。

 このように、「学び」とは、多様な場面で子どもが活動し、母の柔らかな支援に支えられ、学びの工房で追究し合うことで、小さな芽を出し、個性の花を咲かせていくのだと思います。

 

 ■ お知らせ ■

<3年>

・磁石の学習に入ります。磁石の学習は、殆ど危険性がなく安全です。子どもが中心になって活動を工夫し、自分で進める学習にしていきましょう。

<4年>

・液体、気体の温まり方について、学習をしています。今週は、熱気球について、実験ができればいいなあと思います。

<5年>

・電磁石の学習をほぼ終え、クリップモーター作りの発表をしたいと思います。そして、ものの溶け方の以前の続きに戻ります。溶け方の違い、濾過、結晶作りと、学習を進めます。

<6年>

 3年生から6年生までの4年間の理科学習ノート、フィールドノートを綴じました。11冊にもなっている子もいます。4年間の理科学習を振り返り、感想を書きました。

 キツネTは、綴じたノートの最後に、「ご卒業おめでとう」と書きましょう。