アメリカで授業 2008.11.10(月)
ソニー科学教育財団から推薦を受けて、アメリカの小学校で授業をして、NATAというアメリカの理科教育学会で発表をすることになりました。今回のお便りは、その報告をします。
1.出国
新大阪から品川までは新幹線で行き、品川からは成田エクスプレスという特急で空港へ行きました。成田空港は初めてなので、広さに少し圧倒されました。
飛行機は、ビジネスクラスに乗ることになっていました。今まで数回海外に出ていますが、いつもエコノミークラスでした。ビジネスクラスの椅子には、いろいろな装備があり、どのように使ったらよいのか、どきどきしてしまいました。
13時間ほど飛行機に乗って、ワシントンDCのダレス空港に着きました。日本時間の28日の午後4時に乗って、アメリカには、再び28日の午後4時ごろについたようです。へんな感じです。
入国手続き後、国内線の飛行機に乗り換え、ノースカロライナのシャーロットへと向かいました。飛行機に乗るたびに、鞄からコンピュータを出して、上着、携帯電話、小銭、ベルト、靴、鞄を検査に通し、人も金属探知機を通ります。とてもテロの警戒をしています。
2.Morehead小学校
到着した翌日、アメリカの小学校で4年生の授業を見ました。「岩石のサイクル」の授業をしています。
学習設備は、日本よりとても進んでいます。教室は日本の倍はあり、子どもは25人ほどです。各教室にコンピュータが4台あり、ホワイトボードにスクリーン、そして液晶投影機が設置されています。アメリカの旗が中央に掲げられています。
子どもたちは、グループになっていて、全員が前を向いた座り方ではありません。授業は、最初先生が少しお話をしてから、10分間ほどコンピュータからの岩石についての映像を見て、さらに、これから使うワークシートの書き方について映像を使って説明をしました。次に、中庭に出て、オリエンテーリングのように、決められたポイントを回りながら、火山、川、海、地面の下などの地質的な作用や変化の説明を書き写しながら、学びを進めていました。子ども自身が、石粒になって、それぞれの間を行き来しながら変化していくという意図がそのゲーム的学習にしていました。
この学習を見ていて、次のように感じました。
①アメリカの授業、掲示物、先生方の話の中に、「システム」「サイクル」という言葉が多くあるように感じます。全体的な構造、つながりを、小さな学年から教えています。
②カード、授業法、教材、ビデオなどが教科書とセットになっていて、システム的に学習が進められているように感じます。教科書に教材・素材までがついているので、一時間ごとの授業がパックされたような画一性があると思われます。
③多様な民族が入り混じり、さらに移民の子どもたちのための英語の特別クラスに入っている子どもも多いようです。このような状況で学力を保障するためには、日本的な教育の「個人の思いや個の追究」よりも、「システムや仕組みを学ぶ教育」になってしまうのではないかと思いました。
3.小学校で授業をする
最初に、一緒に行ったもう一人の先生が、3年生の子どもたちに授業をしました。福島大学教育学部附属小学校の鳴川先生です。「昆虫の足だけ図鑑を使っての学習」です。カマキリを中心教材にして、子どもたちに、いろいろな昆虫の足の形と生活の仕方について考えていく学習です。
その次に、私が「手回し発電機を使った、電気の発電・蓄電と電気エネルギーの学習」について、5年生の子どもたちに授業をしました。
最初は、手回し発電機にモーター、豆電球、電子オルゴール、LEDを接続して、素材の働きや極性を見つける実験をして素材に親しんでもらいました。
次に、手回し発電機にコンデンサを接続して蓄電し、その蓄電した電気で豆電球を点灯したり、おもちゃの電車を走らせたりしました。そして蓄電量(発電機を回した回数)と、豆電球の点灯時間や、おもちゃの電車の走った距離のグラフをつくってもらいました。
この授業を進めて考えたことは、
①とても短い時間に多くを詰め込んで行った授業だったけれど、こぎつね小学校で取り組んだ時と同じように、興味を持って取り組んでくれました。
②ストップウォッチの使い方や、メートル法の距離の測定、グラフへの記録など、カリキュラムの違いを心配していましたが、活動上の操作は、大きな問題なく進めることができました。
③体験を通した活動、グラフ記録の結果から、エネルギーの量的な見方ができることが分かりました。
殆どが白人でない子どもたちの学校でした。英語を学ぶための学級に通っている子どもたちもたくさんいると聞きました。移民を多く受け入れている地域でした。
4.理科学会で発表
シャーロットという町で開かれているアメリカの理科教育の学会で発表しました。英語で日本の理科教育について発表して、後の半分のワークショップは、通訳の人に助けてもらいながら、進めました。アメリカの先生方に、日本の新しい教育内容である「発電・蓄電・電気エネルギー」について、実験を交えて体験してもらいました。
■ お知らせ ■
<3年>
・石の学習
・家にある石、化石、鉱物などを持ち寄り、石について学習をします。
図鑑、参考書もあれば持ってきてください。
<4年>
・空気と水の性質を研究していきます。
<5年>
・川のまとめをします。調べてもらっている近くの川についての資料や写真や参考書を持ってきてください。模造紙にまとめます。
<6年>
・地震の学習をします。資料を持ってきてください。
<科学G>
昆虫の絵を仕上げます。
<研究会>
幼稚園年長2組と3月の合同授業をします。「私の大好きな石をみんなに紹介しよう」というテーマで、石についての知識、興味、関心を広げたいと思います。3年生は、幼稚園の子どもをリードしながらも、互いに学び合う学習法を、伝えていけるといいなあと思います。