「石の王国」こぎつねさんぽ 2008.5.7(水)
今日は、こぎつね達の遠足の日です。6年生は『石の王国』へタイムトラベルをします。各自の研究テーマを持って、さあ出発です。
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橿原神宮駅に到着しました。飛鳥資料館まで歩きます。4月初旬の校内とは違った草花たちが顔を出しています。レンゲソウ、スズメノテッポウ、カズノコグサ、ムラサキサギゴケが春の田んぼを彩ります。こぎつね達は、スズメノテッポウを使って、ピーピーと草笛を吹いています。古代飛鳥の子ども達も、草笛を吹いていたのでしょう。
また、キツネノボタン、ウマノアシガタ、ハルジオン、ヒメジョオン、ノアザミ、スイバなど背丈のある草花があぜ道に伸びてきているので、華やかです。シロバナタンポポも見られます。珍しいので、こぎつね達は、カメラを向けて撮っています。付き添い希望のこぎつね母とマツバウンランという外来植物についての話をしました。学園前には、ツタバウンランという、石垣を登っていく同じ仲間の植物も見つけています。最近、帰化して増えている植物だと思います。
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飛鳥資料館に着きました。飛鳥時代を中心とした遺跡、古墳、お寺関係の資料を展示解説しています。キツネ先生は、昔のこぎつね達をつれて何度か来ているので、今回は、地質岩石の視点で飛鳥研究をしてみることにしました。
まず、なぜ「あすか」と言うのかという解説に目が止まりました。「洲処」と書いて「すか」と読み、砂のある所を意味するところから、「あ」「すか」と呼ばれるようになったそうです。
また、飛鳥寺の方のお話では、「朝鮮語の『安住の地』というのが『あすか』という響きで、そこから付けられた」と、お話がありました。その説明の時、こぎつねDが、「飛鳥と明日香とは、どちらが先に使われるようになったのですか」と最適なおたずねをしました。
「この明日香の地は、昔、鳥が多くいたようで、明日香の前に飛ぶ鳥をつけて『飛ぶ鳥の多い明日香(飛鳥の明日香)』と長く言われていて、次第に飛鳥だけでも『あすか』と呼ぶようになったのではないか」と、説明されていました。
古代の地形を見てみましょう。明日香の「すか」である「洲処」ということから、考えを広げてみました。この明日香周辺の山々は花崗岩からできています。天の香具山も花崗岩の小山です。花崗岩は、風化しやすい岩石です。温度変化、水の作用によって風化した花崗岩は、真砂(まさ)と呼ばれ、良質の山砂としても使われているものです。その花崗岩が風化して作られた砂が、飛鳥川など山からの水の運搬作用で、平地に運ばれてきて堆積します。運搬作用の大きい川は、山から平地に出た場所に、扇状地をつくります。また、その下流には、洪水の時に溢れた水が残していった土砂が自然堤防をつくります。そのような扇状地や自然堤防の地が、この明日香(洲処)だったのでしょう。
古代の奈良盆地の平地は、おそらく、まだ人が全てを開墾していなかったので、春日山のような原生林(主に常緑広葉樹林)が、かなり残っていたと思われます。平地に原生林というと、ちょうど、アニメ「もののけ姫」のイノシシが走っていた森のようだと考えられます。一方、扇状地というのは、洪水のたびに砂が動いているところなので、大きな木が生えていません。平地の中でも、高台で明るい地面が広がっている場所だったのだと思います。
そのような、扇状地や自然堤防の見晴らしのきく少し高台に造られたのが古代の嶋宮、川原宮、板蓋宮、豊浦宮などの宮々だったのだと思います。人は水から離れると生きていけません。扇状地や自然堤防の上という水害と背中合わせの場所に、古代の宮は造られたのだと、「洲処」という言葉から推論しました。
次に、時代が過ぎ、治水技術が開発され、やがて平地の田んぼの開墾が進み、藤原京が造られることになりました。周囲には、高台の耳成、畝傍、天の香具山があります。洪水の時は、天皇、豪族たちは、そこへ逃げられることも考え合わせて、飛鳥川を中央ななめに取り込んだ整然と条里制が引かれた都がつくられるようになりました。
昔の飛鳥川をはじめ、奈良盆地内の川(全て大和川につながる)は、もっともっと水量も川幅もあったと考えられています。それは、山々には原生林があり、まだ、平地にも部分的に原生林を残すという、緑のダムを持っていたので、雨が降っても木や地面の中に水を溜め込み、徐々に流しました。豊かな水量の川で、藤原京から平城京への遷都も、船を使って物資を運んだようです。
さて、石の文化を見てみましょう。明日香は、巨石文化とも言われ、遠くイースターなどの文化や、ゾロアスターの拝火教、エジプトのピラミッド造営にもつながる、ロマンとミステリーを思わせる遺跡が多くあります。
石舞台(古墳の石室)のような大きな花崗岩を移動したり、硬い花崗岩を使った石棺(鬼の俎板雪隠)、亀石、酒舟石、須弥山石、亀形石槽など、高度な岩石を加工したりする技術と、運ぶ技術を持っていたことが分かります。木の文化であると思っていた日本文化の初期は、石の王国だったのですね。古墳とピラミッド、文化のつながりがあったのでしょうか。
花崗岩は、マグマが地面の下で、長い年月をかけてゆっくり冷えてできた火成岩(深成岩)です。主に、黒雲母、輝石、角閃石、長石、石英などの鉱物の集まりとしてできています。飛鳥の石造を作っている花崗岩は、捕獲岩(ゼノリス)を多く含むことが特徴的です。液体のマグマ溜まりの中に、周りの固体の岩石が取り込まれて、マグマの中に半分溶けているのです。
「石の王国」さんぽで、こぎつね達は、どんな研究ができたのでしょうか。キツネ先生は、今回「洲処(すか)」という花崗岩独特の場所の言葉から、いろいろな考察を試みました。
■ お知らせ ■
<3年>
種の観察と、植物の栽培を始めます。植木鉢に植物を育てて、成長の様子を観察します。星組は、押し花の提出。
<4年>
ツバメの観察の発表と、校内の樹木を観察します。落葉樹と常緑樹、広葉樹と針葉樹の学習をします。来週は、ツバメ新聞を書きますので、しっかり写真やデータを持っておくようにしてください。押し花の提出。
<5年>
発芽の条件の観察の次は、成長の条件の実験をします。並行してメダカの卵の観察もしていきます。メダカの飼育、家でも始めていますか。卵の中の成長の様子、虫眼鏡で観察してください。
<6年>
電磁石の学習を進めます。今回は、極や磁場の学習をしたいと思います。棒磁石と電磁石の比較もします。
<科学G>
科学グループの発表に向けて、自分の研究の進行状況をまとめていきます。独自学習を進めてください。