奈良の学習法
先週の土曜日、京都教育大学の大学院生の講義に行きました。私のこぎつね小学校の理科教育を紹介しました。講義をするように呼んでくださっている京都教育大学の教授は、奈良の教育を、高く評価してくださっています。子どもが学習を創っていく教育は、現在の学校教育の指標になるのではないかと、考えて下さっています。大学院なので、現場の先生もおられます。
今、教えている3年の皆さんの理科ノートを、10冊ほど持って行き、見てもらいました。まだ、スタートしたばかりですが、きつねTが目指しているノート記述を身につけてきているこぎつね達がいます。ちょっと、自慢してきました。また、授業の話し合いは、数年前の5年生の様子を見てもらいました。講義の後、大学の教授は、子どもが主体的に学びを創ること、話し合いを自分達で深めることなど、子ども達の取り組みの素晴らしさを、感想として語ってくださいました。
子どもが創る授業の始まりは、子ども達の「話す力、書く力、つなぐ力」が、大切です。次のようなお話をしました。
話す力は、独自学習を深くすること、生活と学びを融合すること、友だちの意見に学ぼうとするなかよしの学級が育っていることが大切です。理科の学習だけでなく、朝の元気調べの一言発表、授業の司会、日直のしごとなど、子ども達は、多くの場面で話す力をつけています。自ら働きかける話す行為が、その子の学習能力を高めます。私たちの学校では、授業の八割は子どもが話す時間としています。
書く力は、授業中に友だちの発表を自分でノートに書くこと、メモ帳を持ち歩き記録すること、辞書や参考書を常に手元におき調べる習慣を身につけることなどが大切です。ノートは、黒板に書かれたことだけを書き写すだけではなくて、自分で調べた事、考えた事、友達の発表などを聞き取りながら、自分で創るものです。黒板を写すだけが書くことではありません。授業中に自分のノートを創るような、書く力を付けたいと考えています。
つなぐ力は、観察や実験をやり続ける根気、めあてとふりかえりをしながら計画的に取り組むかしこさ、友達の発表に論理的に考えをつなぐこと、そして、友達に対してプレゼンをする力です。個人の中で考えをつなぐ力と、他の人と考えをつなぐことです。
最近は、担任を持つことは少なく、理科を専科で教えることが中心です。専科で教えている場合、子ども達の成長の兆しは、ノート記述の工夫がなされてくるところで、まず、感じることができます。ふりかえりがノート1ページほど書ける、独自学習ノートが充実してくるなどです。次に、「かしこさ」が育ってきます。そのためには、自分の学びを自分で始める、幅の広い学び方を身につけることが大事なことです。一人で自分の学びに向かうことができる人を育てることです。自分の学びを自分で進めるとは、ノートに向かう時間を多く持つこと、本を読む時間を多く持つこと、実験や観察を自分で進めることなどです。また、目の前の課題に集中できる力を身につけることです。
キーコンピテンシーという言葉が、教育界で使われるようになりました。文科省は、次の様な説明をホームページに載せています。「『コンピテンシー(能力)』とは、単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力。」 21世紀型のスキルとも言われ、教科をこえた自ら学ぶ為の資質能力をさすようです。私たちの学校では、先に述べた、話す、書く、つなぐ力と、さらに独自学習、相互学習を積み重ねながら、学びを深めています。これらは、キーコンピテンシーが意味するところと、共通するところが多いように感じます。個別の教科の目標を超えた、身に付けたい力です。表現する力、議論する力、論理的に考える力なのですね。
理科学習を通して、キーコンピテンシーと言われる能力を身に付けて、立派なこぎつねになりましょうね。