話し言葉で学びを進めること

 

子ども達は、小さい時、話し言葉によって身の回りのことを学んできました。母や父の言うことを真似しながら、物のなまえ、感情の表現、物と物の関係性の言葉を身につけていきます。さらに、それらの言葉を複雑につなぐ文章表現も学びます。日本語の獲得です。書き言葉を使わないで、ほぼ話し言葉によって、いろいろな知識や表現を身に付けてきました。

幼稚園教育は、基本的には話し言葉によってコミュニケーションをします。書き言葉は積極的に使用しないで、聞く、話す、考える活動を通して、仲間と生活する術を学びます。一方、小学校1年生では、個人の机があり、国語があり、ノートが配られるので、高学年担任から1年の担任になった先生は、ついつい、文字の書き方、文章の書き方、本の読み方の教育に集中してしまいます。静かに机に座って、ノートに向かい、声を揃えて教科書を読む教育をしてしまいます。幼稚園から進級してきた子ども達は、その学びの環境の違いに耐えながら、なんとか新1年の1日のすごしかたに体を馴染ませ、小学校教育を進めます。

今、小学校1年の教育に、もっと話し言葉による教育をカリキュラムとして設定して取り組むことが大切であると考えます。「聞く、話す、考える」を中心にした低学年の教育プログラムです。もちろん、我が校は、話し言葉を育てる場面がたくさんあります。そこで、我が校の話す場面を取り出してみましょう。少し考えてみるだけで、「朝の会の元気調べ、自由研究発表、学習のめあて、相互学習、学習のふりかえり、なかよし集会、劇、歌」などがあげられます。高学年になるほど文字による裏付けはしっかりしてくるけれど、基本的には話し言葉によるコミュニケーションです。

そこで、1年生で、書く活動を中心にしないで、「話す、聞く、考える」教科活動を位置付けることはできるのでしょうか。現在カリキュラムとしてある生活科や、低学年の総合的な学習は、これに近い活動が考えられますが、設定の趣旨は話し言葉を育てるということを中心に置いているわけではありません。話し言葉は、対話が大切です。また、いい話し言葉を聞くことも大切です。

もう少し深く考えてみましょう。話し言葉のカリキュラムは、机に向かっていると進みません。行動的な学びの中で育てることになります。行動の場面は、話し合う、お出かけに出る、話を聞く、活動をする、発表会をするというようなことがあります。学習の内容は、地域で学ぶというテーマを想定して、個人の机につかないで活動を進めるのです。机は、個人持ちではなく、図書室の机のように、共同で使うようなものでいいでしょう。木曜に始まり、水曜に終わるような、土日を間に挟んだリズムはどうでしょう。木曜は、テーマについて話し合いをし、図書室で調べたり、お話を聞いたり、計画を立てたりします。金曜は、外に出かけ調べ学習をします。写真も撮影します。土日は、家で出来ることをします。月曜は、出掛けて調べたことを使って、表現をする活動をします。火曜は、発表会の準備をします。最終日の水曜日は、発表会をします。活動は、1週間程度で進める大きなテーマを持ちます。お出かけ先は、市場、田畑、公園、川、山、駅、動物園、水族館、博物館、美術館、社寺、音楽会など、いくらでも有ります。例えば12個あると、1学期間はこれで大丈夫。社会、理科、国語、造形、音楽も含まれていますね。

実は、きつねTのかつての1年生の学級では、このような取り組みを3週間一サイクルで取り組んでいました。昔の低学年集会は、3週間に一度、発表が回ってきていたからです。国語や算数などのカリキュラムを進めながらの取り組みなので、三週間のサイクルです。そこで、現在のわが校の教育の、5歳(幼稚園年長)から6歳(小学1年)の頃の学習で、この一週間サイクルの学習は可能なのではないでしょうか。5歳の三学期から、6歳の一学期あたりの取り組みに、このカリキュラムを設定し、話し言葉で育てる教育を進め、活動的に学びをつくる基礎を培うのはどうでしょうか。