今日は、堺市学校理科展覧会を見に行きました。かつて自分も、この理科展のお世話をする係をしていたなと、懐かしく思い出しました。そこで、今日の仮想研では、これまでの理科教育について、振り返ってまとめてみました。

 自分が科学教育研究所の職員、そして小学校の先生になった頃は、理科という教科は、1年生から始まっていました。その後、低学年では生活科が始まり、理科は3年生から教えることになりました。

 小学校の1、2年生で生活科が始まって、随分経過します。ネットで生活科について調べると、「小学校の教科のひとつ。 身近な社会や自然とのかかわりから生活を考え、生活に必要な習慣・技能を身につけるための教科。 従来の1、2学年の社会科・理科を統合したもの。 平成4年(1992)から全面実施。」ということでした。自分が小学校の先生になったのが1980年頃でした。まだ、小学校低学年では理科の教科書がありました。

 また、「総合的な学習の時間」が始まった年代についても調べると、「総合的な学習の時間は、小学校では2002年4月、中学校では2003年4月に施行された学習指導要領により創設されました。「総合的な学習の時間」は、子どもが自ら学び、自ら考える力や学び方、ものの考え方などを身につけ、問題解決する能力などを育むことをねらいとしています。高等学校では、2022年度から「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に名称を変更され、学習指導要領が改訂されました。教科や科目の枠組みを超えた課題に取り組む点はこれまで通りですが、自ら探究するテーマを設定する点に重きが置かれています。」とあります。

 生活科は30年前、総合的な学習の時間は20年前に始まったということになります。生活科は、堺市から奈良こぎつね附属小学校に転勤した頃、総合的な学習の時間は、その10年後です。

 生活科は、低学年の理科と社会科を統合して創設されました。しかし、今から考えると、生活科は、社会科の1,2年の学習として実施し、理科はそのまま1年生から始めるべきだったのではないかと思います。生活科が始まってから10年後には、総合的な学習の時間が新たに創設されているので、総合的で教科横断的な学習を進める時間が、さらに拡大しました。また、全ての教科学習の時間が圧縮され、総合的な学習の時間が始まりました。

 堺市学校理科展覧会には、生活科が始まってからも、1年生から出品をしているのですが、昔よりも低学年の科学的なレベルは下がっているように感じます。

 

戦後の理科教育の変遷をまとめてみると、

 1940~1970年代 教育の現代化運動 科学教育の推進 科学教育研究所が各地に存在

 1980~1990年 科学的リテラシーを身に付ける教育

 1992年 生活科始まり、1、2年生の理科はなくなる。

 1992年9月から全国の国公立学校で月1回、土曜日を休業日にする方式が実施された。

 1995年4月から月2回、土曜日を休業日にする方式が実施された。

 2002年4月から公立学校において完全学校週5日制が実施された。

 2003年 総合的な学習の時間が始まる。週5日制も始まり、各教科の(理科も)時間が圧縮される。

 

 戦後復興期は、科学教育に予算をつけ、国の施策として科学技術教育が推進されてきたのですが、1990年代からトーンダウンしています。日本経済のバブル景気時期は、1986年11月から1991年5月までの期間です。その後、教育では「ゆとりと充実」と言われ、世の中では景気が良くない時期がずっと最近まで続いています。教育全般、科学教育にも予算がつかない時代となります。

 日本は、一時期のバブル景気に浮かれ、また、バブル崩壊で意気消沈してしまって、科学的な基礎教育を疎かにしてしまった結果、日本のいろいろな科学・工学技術、さらにはデジタル技術が、世界の発展から遅れをとってしまいました。また、学校では、学校週5日制が実施され、理科をはじめ、各教科の時間がさらに圧縮、削減されています。教育の「ゆとりと充実」というキャッチフレーズで、教育全般が弱体化されてしまいました。誰が、その「ゆとりと充実」の時代を提唱したのでしょう。国家的な損出の時代だったと思われます。

 文科省の学習指導要領の改訂は、およそ10年に一度となっていて、最近では2020年度から新指導要領による教育が始まっています。次回の指導要領の改定は10年間以上かかるようなことも言われています。時代の変化が激しい世の中です。次の日本をになう子ども達を育てる教育構想をしっかり考えて、世界の科学の発展から遅れない、世界をリードできるような教育を、子ども達に身に付けさせなければいけないと思います。

 

 自分がかつて22年間勤めた国立学校法人の附属小学校の教育は、次期学習指導用要領改訂、2030年以降の教育について構想し、提案していくことが大切です。今は、AI技術、デジタル技術が一気に進歩している時代なので、いろいろなことを簡単に調べて、それで学習としてしまいがちです。そうではなくて、AI、デジタル技術をフルに活用しながらも、実際の自然や現象に立ち向かう、理科教育、科学技術教育を子ども達に身に付けさせる教育が必要になると考えます。

 世界をリード出来る理科教育、それは、まず現在の最先端の科学技術が到達している世界を知ること、さらに現在の科学が目指している方向や未来構想を、子ども達が共有できることが大切です。子ども達の生活から、世界の最先端技術の間を辿るのは、子ども達の努力次第です。それを支えるのが教育です。小学校でも出来ることはたくさんあります。最先端科学の現状を調べるのも子ども、その姿を目の当たりに体験するのも子ども、その最先端を活用して学習を進めるのも子ども自身です。伸びていく力を、引き出すのが教育です。教えるのではなく、子どもの力を信じて、子どもが動き始め、その探究活動を支援する教育であることを、今後の理科教育では大切にしなければいけません。

 最近、電化製品を買うとき、最新のものを買っても直ぐに時代遅れになり、進歩の変化に対応しなくなります。教育も、最先端の技術を活用しながら慣れ親しみ、探究し、次への時代変化が直ぐに感じ取れる状況に子ども達を置くことが大切です。教師は、同じ展開の授業は二度としない、常に最新の状況、昨年より今年へと進化発展している学習環境を作り続ける努力が必要だと思います。

 

 

♫ 白露末候 ♫