京都大学の大学院に籍を置きながら、茨城県北部にある「小川の森」で、調査研究されたことを、分かりやすく紹介されている本でした。動物による種子の散布、特に、鳥による種子の散布について研究をされていました。よくある科学論文集のような難しい本ではなくて、一般の人にも分かりやすく、経緯や調査の要点、失敗したこと、分かったことなどについて紹介されている本です。

 鳥は、なかなか目で見て調査ができないので、時間を決めて、その間に聞こえる鳴き声で存在を記録するようです。そのとき、他の鳥の鳴き声をまねる鳥がいて、「○○の鳴き声をまねする○○鳥の鳴き方を、さらにまねをする鳥がいる」ということもあるようです。調査には、いろいろな困難があることが分かりました。

 直江さんは、この本を書く時、鳥や動物の名前をカタカナだけでなく漢字表記も紹介されていました。「日本は世界でもめずらしいほど古くから続いている国であり、日本語を使い続けている。そのため、昔の日本人がつけた名前をわたしたちは比較的かんたんに理解することができる。千年以上前の祖先がどのような視点で生き物と付き合ってきたのかを知れるのは、わたしたち日本人の特徴である。このような考えから、ところどころで文章の流れを損なわない程度に、名前の解説も付けてみた。」とありました。ニュウナイスズメ(入内雀)、イエスズメ(家雀)、ハシブトガラス(嘴太烏)、ブナ(橅)、オニグルミ(鬼胡桃)などです。とてもよいことだなと思いました。