shup 本の日記

shup 本の日記

本の日記をつけていきます。
本はその時たまたま読んだものになると思うので、
最新作や話題作ではなく、出版されてから時間が経ったものになると思います。
※2012/4/2より美術館の企画展の感想も書きはじめました。

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「悠久の美ー唐物茶陶から青銅器まで」~6月10日 出光美術館
★★★★☆

青銅器がメインの展示会かと思っていたら、それをモデルに作られた陶器が並んでいて可愛かった!

一番のお気に入りは、『禾目天目茶碗』。縁が丸くて下がほんの気持ち凹み、高台の手前で釉薬がもこっとして段になっている形が好き。模様も見事で惚れ惚れして、その場を離れがたかった。

あとは、アシンメトリーの布袋のような形をした青銅器「蟠螭文鳥形把手付水注」(※ふたについた小さな文鳥は口が開く!)と、頭と口が吸盤みたいな鳥形のかんざし、角だけ茶色くして形を強調した器が気に入った。

これらを、鉛筆を借りてスケッチまでしてしまった。記憶が定着していいので、今度から鉛筆とメモ帳を持って行こうと思う。


この日は、高橋由一展にも足をのばして、ヘトヘトになってしまいました。


http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

シャケが美味しそうだった「高橋由一展」
http://yuichi2012.jp/
「サリーの愛する人」 エリザベス・オハラ著 もりうちすみこ訳
★★★★☆

歴史学者の著者が書いただけあって、19世紀末のアイルランドという馴染みのない土地のことが、いきいきと伝わってくる本。

サリーの田舎から出てきたおのぼりさんとしての心情や、ふたりの彼の間で夜も眠れないほど迷う素直でみずみずしい心、その一方で一家を仕切れるほどの強さを持ち始めるところなど、とてもリアリティがあり、同感できました。

また、当時の家政婦の立場の弱さや、社会全体に覆いかぶさっていた身分格差、未婚で妊娠すると自殺したり、親に勘当されるほど不名誉なことだったことなど、とてもシリアスなことが織り交ぜられており、大人になった今もドキッとさせられました。
小学生の自分がこの本を手に取ったら、とても考えさせられて視野が広がったことと思います。

小さいときにそういう本に出会っては感動していたことを、久しぶりに思い出しました。やはり児童書の編集って夢があって素敵だなあ。

アンやローラの再来と書いてありましたが、夢見がちでもっと“物語”に近いアンとも、実話をベースにしたローラとも違う、どちらかと言えばその中間にあるお話のように感じました。

3部作の3冊目であるこの本。読み終えても、まだ2冊読んでないお話があるってうれしかったです。そしていま1冊目を読み始めています。

サリーの愛する人/エリザベス・オハラ


※美術館に行った感想も書きたくなってきましたので、今回より。


「あなたに見せたい絵があります。―ブリヂストン美術館開館60周年記念」ブリヂストン美術館

ブリヂストン美術館が開館60周年を記念した企画展の第2弾。美術館が行う周年記念の企画展は、さまざまな画家の代表的な作品が並ぶので楽しい。○○派とかではないので、絵のタイプもばらばらだからこそ、自分が好きな作品に出会えます。


中でも印象に残った作品。

●ポール・セザンヌ「鉢と牛乳入れ」
遠近法をわざとゆがめて2つの静物が描かれている小さな作品。小品なのにくっきりと印象に残る。
※セザンヌが亡くなるまで筆を重ねていたという「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」も飾られている。海外からの貸し出し依頼が多数あるが門外不出にしているらしいと聞くとありがたみが。

●ジョルジュ・ルオー「郊外のキリスト」
20世紀パリの場末の工場地帯に翻案して描かれたキリスト。ルオーについては、昔は暗い絵だと思うばかりだったのが、だんだん好きになってきました。そこに漂う寂しさが何とも言えない。人物の上半身を描いた「ピエロ」という絵も飾られています。

●藤田嗣治「ドルドーニュの家」
まじまじと近くで見て、迷いのない細い線で白い室内を描き切るってすごいと思った。

●岡鹿之助「セーヌ河畔」
おもちゃや昔のマッチ箱みたいなきれいな色で描かれた川沿いの家々。見ているだけで嬉しくなっちゃう。

●坂本繫二郎「能面と鼓の胴」
坂本繫二郎といえば馬の絵だと思っていたが、還暦過ぎには能面、80歳を過ぎて月に画材が変化していったとか。

●アンリ・ルソー「牧場」
振り返る牛2頭がかわいい。1本だけ生えた木も印象的。

●ギュスターヴ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」
黒いピアノのつややかさ。
『人生激場』三浦しをん
★★★★☆

妄想もここまでくれば楽しい。

前回感想を書いた小説『舟を編む』を読みかけのとき絶賛したら(それが自分の中での盛り上がりの頂点だった)、同僚のMさんがこのエッセイと小説『私が語りはじめた彼は』を紹介してくれたのでした。

で、一応位が高そうな小説から読み出したのですが、おどろおどろしい男女の話をバカバカしく感じてしまい(瀬戸内寂聴の小説とかもそう)、1話目で放り出してしまいました。

で、電車で長時間移動するときにとりあえずと手に取ったこの本でひどい目にあったのです。あんまりおかしくって声を出して笑いそうになるんだもの。声はさすがに出さなかったですが、ニコニコからニヤーっと口元がゆるむのを止められず、前に座っていた若いお兄ちゃんに絶対不審がられていました。

家にこもっているといいながら、そうとう文化的な生活(本を読み、古本を買いあさる)をしている著者。モテない妄想キャラはどこまで本当なんだろう。いずれにせよ、20代で乙女の混じったオヤジキャラを展開できる才能ってすごい。

10年前に書かれていながら色あせない魅力。と思うけど、それは私が10年前に話題になった出来事を知っているせいだろうか。キムタクのGOOD LUCKとか、ワールドカップのカーン様とか、指輪物語の胸毛が濃そうなイケメンとか。20歳の子が読んだら「?」がいっぱいなのかな。

とにかく、この著者だと小説よりエッセイが好きだなと思いました。小説はなんというか、わかりやすいんだもの。一方でエッセイは、世の中への偏見に満ちた正しき怒りと、ゆるーいダメダメなキャラがあいまって、ホスピタリティあふれるものになっています。

人生激場 (新潮文庫)/三浦 しをん
『ほんとのおおきさ特別編 元気です!東北の動物たち』
監修/小宮 輝之 写真/尾崎 たまき 絵/柏原 晃夫 文/高岡 昌江
★★★★☆

すべて実物大の動物の写真で構成された「ほんとのおおきさ動物園」シリーズの特別編。津波をかぶっておびえる動物たちの様子や、避難した飼育員さんが全滅を覚悟していたら生き残っていた動物、なんとか守り抜いた貴重な魚など、震災時とその後の様子が文章から直に伝わってきます。

ビーバーは淡水に住む動物なので津波をかぶって半分死んでしまったとか、ショックでした。ナメダンゴという魚は600匹中200匹生きていて、100匹だけ飼育員さんが連れ帰ったとか。あとの半分を断念しなきゃいけなかった無念と生き残らせることができた喜びと、両方あるのだろうと思います。

生き残った動物の迫力ある図鑑のような写真はもちろん、マンガ風に動物の可愛さや生態も描かれていて、いろんな意味で楽しんだり考えたりできる本です。1400円は全然高くないと思います。

ほんとのおおきさ特別編・元気です!東北の動物たち/高岡 昌江