公務員試験の面接における「傾聴力」について | 彼の西山に登り

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この時期の2021年度の公務員試験は、市役所、社会人経験者採用、就職氷河期世代採用や障害者採用等、秋に1次試験が実施されたものの人物試験が中心になっています。

そういった試験の模擬面接が毎日のように続いています。

 

公務員試験に限らず、面接試験には、自己PRあるいは長所・短所といった項目が大抵含まれています。

その際挙げられるPRポイントや長所の1つとして、「傾聴力」があります。

 

傾聴力とは、「相手の話を聞く力」、もう少し敷衍すると、「相手の話に耳を傾け、熱心にきくスキル」とか、「人の意見に熱心に耳を傾け、真意を汲み取る力」などと説明されます。

ビジネスなどの場面でも、「傾聴力」は、重視されるようになっており、面接の指導書やインターネットでもよく取り扱われています。

 

公務員試験の面接カードにも、自己PR欄や長所欄に「傾聴力」を挙げる方が少なからずいます。

ただ、そういった面接カードで公務員試験の模擬面接を繰り返していると、面接で「傾聴力」を主張する場合の注意点といったことが浮かび上がってきます。

今回はこの点について簡単に言及します。

 

 

まず第一に、「傾聴力」は、他の長所・能力の多くと異なり、面接現場で面接官が直接チェックできることを意識する必要があります。

 

大抵の長所は、本当にそれがあるのか、客観性があるのかを確認するためにそれが発揮された具体的エピソードや具体的成果を聞いたりするのですが、最終的には、受験者が話す内容やその様子から、信用できるか否か判断するしかありません。

 

しかし、「傾聴力」は、面接における受験者とのやり取り自体から確認できます。

言い換えれば、面接官が受験者の「傾聴力」の有無を判断するのは、面接カードの内容や面接外のエピソードに頼らなくても可能です。

具体的には、

・質問とそれに対する答えが符合しているか

・質問の意図を把握した答えになっているか

といった点を確認することで、受験者の「傾聴力」は推し量れます。

 

したがって、受験者が、いかに自分には「傾聴力」があると主張し、それが発揮されたエピソードを披露したとしても、例えば、

・当該自治体の志望理由を質問したのに対し、ほとんど公務員の志望理由に終始する。

・大学生に「大学時代」のエピソードを質問したのに、断りなく高校時代のエピソードに終始する。

・面接官が受験者の答えに納得がいかないため、再度同じ質問をしたのに対し、受験者が同じ答えを繰り返して延々ループする。

といったような事態が面接で生じると、受験者の傾聴力に疑問符が付くことになります。

 

特に、質問の趣旨と答えとのずれは、あらかじめ想定問答を準備した場合で、その想定質問と実際の面接での質問が若干ずれているにもかかわらず、想定問答で一番近い質問の答えをそのまま答えて済ませる場合におきやすくなります。

 

したがって、これを防ぐためには、想定問答をつくって事足れりではなく、質問に応じて答えを調整できるよう、その内容に習熟しておくことが必要です。

その意味で、面接カードの文面作りに面接本番直前までかけるのは危険でしょう。

試験現場で記入する場合も内容は事前に準備し、それに沿って面接練習もしておくのが安全です。

その上で、現場での面接官の質問をよく聞き、質問意図を把握して、それを踏まえた回答をするのが、本来、傾聴力ということのはずです。

 

 

第二に、「傾聴力」は、話をよく聞くという定義上、少なくとも部分的には、いわば「受け身」の長所です。

したがって、特に能動的な行為を伴う他の長所に比べ、「傾聴力を発揮したエピソード」を効果的に表現し、アピールすることに工夫が必要になります。

傾聴力を発揮したことによってどのような効果があったか、問題解決にどうつながったかを効果的に話す必要がありますが、この点が難しい場合も、他の長所に比べて多い印象です。

 

また、できれば、相手が安心して本音を話せるような環境づくり、聞き方、といった技法的なことなど、具体的な内容が欲しいところですが、何となく、相手の話をよく聞くよう心がけている、しっかり聞く態度、位で終わりがちです。

話を聞いた相手に「他の誰にも話せなかったことが話せた」と言われたとか、「なぜかあなたには話しやすいんだよ。」と言われたとか、話を聞いた相手の反応を入れると分かり易くなる場合もあるでしょうが、エピソード自体にかなりの具体性が必要になりますから、事前の整理が必要です。

 

「傾聴力」は、積極的に話す・行動する方面に自信のない方が、長所として使う傾向がありますが、それをどのように発揮し、今後の仕事にどのように活用できるか、説得的に表現するためには、事前の準備が重要になるでしょう。

 

 

 

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