民法(債権関係)改正法が平成30年度教養試験に出題される可能性について | 彼の西山に登り

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【本文】

 

以前から結構継続的に、民法(債権関係)改正法(以下、「平成29年改正法」の公務員試験出題に関する、以下の記事に相当なアクセスがあり、関心の高さが伺えます。

 

民法(債権関係)改正法施行日決定!~公務員試験に出題されるのはいつから?~

 

ただ、この記事は、本文で「少なくとも専門択一試験の場合」と断っていることからも、テーマが「公務員試験・専門択一」であることからも、お分かりと思いますが、あくまでも専門試験における出題を想定した記事です。

 

教養試験(基礎能力試験)における出題についても付言しておけばよかったのですが、読み返してみたら全く言及していませんでした。

そこで今回は、この点について書こうと思います。

 

結論から言えば、平成29年改正法は、平成30年度公務員試験でも、教養試験(基礎能力試験)の時事問題で出題される可能性はかなりあるといえるでしょう。

 

民法に限らず、新規立法・改正法が教養試験(基礎能力試験)に出題されるとすれば、社会科学(法律・政治)か、時事問題ということになります。

ただし、社会科学の場合、専門試験科目と異なり、立法・改正の背景や経緯なども普通に出題の視野に入るため、時事との区別は相対的なものになり勝ちです。

 

その結果、以前の記事でも書いたように、専門試験では、施行後でないと出題されないのがほぼお約束といっていいのですが、教養試験の場合、特に時事問題の位置付けの場合は、法律・改正の成立・公布段階で出題されることもあります

例えば、マイナンバー法は、2013年5月31日に公布された後、施行期日である2015年10月5日の前年(2014年)の特別区Ⅰ類の教養試験で出題されています(平成26年№34)。

特に施行期間が長いと、そうなりやすいといえるかもしれません。

 

平成29年改正法の場合

①そもそも民法が重要な法律で影響が大きいこと。

②財産法につき、民法制定(明治29年)以来最大の改正であること。

③施行期間が約3年あること。

④報道、広報、出版物等から受験生が情報を入手できていると想定 できること。※1

などからして、平成30年度教養試験(基礎能力試験)の、特に時事問題で出題される可能性はかなりあるだろうと思います。

 

 

平成29年改正法は、大きく、①全く新設されたり、従来の規定を根本的に変更した部分と、②従来の判例・通説に基づく実務の基本ルールを明文化した部分とがあります。

 

どちらの部分にしても、教養試験(基礎能力試験)である以上は、あまり細かいところまで気にする必要はないので、一般的な時事問題のテキストや、予備校で受講している方なら時事問題の講義などで扱ったポイントだけで十分と思います。※2

特に②は、専門試験対策をやっている方は、内容的には従来の判例・通説で判断できますから、①を中心に押さえればいいでしょう。

 

 

まぁ、専門試験の目で見ると、錯誤(民法95条)が法律行為の無効事由から取消事由に変わったことなどは、J.H.v.キルヒマンの皮肉、「立法者の三つの訂正の語句で、(法学の)全文庫が反古となる」が身に沁みてまず忘れないんですが、教養試験(基礎能力試験)向きではないかもしれませんね。

 

 

 

※1 時事問題のテキストや受験雑誌などにも載っていますし、施行前にもかかわらず、市販の法令集(六法)が、平成30年度版から足並みを揃えて改正規定中心の編集(現行規定がまるで付録か参考条文扱い!)になっており、受験生の立場としては、「知らない」とは言い難い状況に追い込まれて?いますね。

 

※2 例えば、多くの教材では、①全く新設されたり、従来の規定を根本的に変更した部分では、短期消滅時効の廃止・消滅時効期間の統一、法定利率の引き下げ、個人保証人の保護の強化、定型約款規定の新設など、②従来の判例・通説に基づく実務の基本ルールを明文化した部分では、将来債権の譲渡、敷金返還等賃貸借の基本ルールなどの明文化が挙げられていますね。