裁判所事務官の志望理由の構成について | 彼の西山に登り

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明日は裁判所職員1次試験の合格発表日です。
周知のとおり、2次試験は、総合職の方は筆記試験もありますが、一般職の方は面接試験のみです。
そして一般職の2次試験の初日は6/28(火)で、早い方だと1次試験の合格発表日から1週間しかありません。
そのためか、このところ裁判所事務刊の志望動機に関する記事にアクセスが集中しています。
志望理由の注意点・裁判所職員編

大きく内容を変更する必要は認めていないのですが、何しろ2013年の記事で、その後の変化というものもあります。
そこで、大部分は上記の記事の再説になりますが、今回は裁判所事務官の志望動機の構成についての注意点を再説します。


公務員試験の中でも裁判所事務官の試験というのは、面接カードを書くに際して志望動機に苦慮する人が特に多いのが特徴です。
「そもそも志望理由が思い浮かばない」という方も少なくないでしょう。
それは、裁判所事務官の仕事内容があまり知られていない一方で、面接で志望動機を深堀りされる場合が多いとされていることから、それを避けようとする心理が他の職種に増して強く働いて、動きがとれなくなるからだろうと思われます。

したがって、基本方針となるのは、

①裁判所事務官の仕事内容を調べ、「やりたい仕事」を明確にすること。
②「突っ込みを避ける」ために不自然な内容を構成するより、「突っ込まれたらどう答えるか」を考え、相談し、準備すること。

ということになるでしょう。
ただし、このうち②は裁事に限らず全ての職種にいえることですから今回は省略し、話を①に限定します。


まずは裁判所事務官の仕事内容が分からなければ、志望理由も構成しようがないでしょう。
したがって、裁判所事務官の場合は、「なぜなりたいのか」から考え始めるのではなく、裁判所職員の仕事を書籍、HP等で調べ、「やりたい仕事」を具体的に明確にすることから始め、なぜそれをやりたいのか、という方向から攻めていった方が、内容を固めやすいと思います。

事前に興味があれば、裁判所が実施する見学ツアー等に参加し、そこでの具体的体験を使うこともできるでしょう(見学ツアー等に参加したか、はよく面接できかれるようですね)。
今からとなると、裁判傍聴や、シンプルな裁判所見学ということになるでしょう。
どちらの場合も重要なのは、見聞きしたこと自体ではなく、そこからどう考えて裁判所事務官を志望するに至ったか、という思考の筋です。

極論、「正直1次試験の段階ではあまり強く意識していなかったのですが、せっかく合格したのでいろいろ調べたり見学しました。そのときの○○という経験から、裁判所事務官の仕事の○○なところに自らの仕事としてずっと取り組んでいきたいという魅力を感じただけでなく、自分の○○な点に最も合うと思い至り、第一志望を○○県から変更しました」くらいの少々わざとらしい感じでも、内容・話し方と本人の印象とが一致すれば、「幼い頃家庭の問題を裁判所に解決してもらって憧れた」よりよほど説得力があると思います。


ここで、視点を変えて、裁判所(採用)側の立場を考えてみます。
裁判所事務官は、その職務内容が余り知られていません。
そこで、面接官の一般的な懸念として、他の職種と両方合格した場合、仕事内容のイメージが描きやすい他の職種を選んで裁事を辞退してしまうのではないか、という疑いを強く持っているのが通常でしょう。
特にここ1・2年、裁判所全体として採用辞退者や採用面接辞退者の多さに非常に危機感を抱いているようで、面接試験の配点比率を下げたり、面接時間が長くしたりしているのはその影響と思われます。

また、受験者が裁判所事務官の仕事について、過大な期待や勘違い(法曹のような仕事とか)をしていて、入所後に「こんな筈ではなかった」と辞めてしまうことがあると、採用側としても問題です。


そこでしばしば、面接カードの内容や実際の話の内容などによっては、面接中で、例えば、
「行政と司法の違いは何ですか?」
「(裁判部門での)裁判事務と、(事務局での)司法行政事務のどちらをやってみたいですか?」
「裁判所事務官と裁判所書記官の違いは何ですか?」
など、裁判所事務官の仕事内容を知っているか、それに本当に関心があるか、確認する質問がされます。
これに答えられるように準備する必要があるでしょう。
ただし、向こうの方がプロですから、知ったかぶりは厳禁です。
これは法律や裁判の知識面でもいえることです。

法学系の学部の方などで、志望動機で「法律・裁判に興味があるから」という方だと、内容を詳しく突っ込まれるかもしれません。
裁判所だからといって、必ずしも興味・関心を法律に関係づけたがることはないと思いますが、面接カードに書くなら、他の法分野に飛び火しないように、興味ある法分野を具体的に特定しておくのが無難でしょう。
それでも、分野によっては向こうの方が圧倒的にプロですから、余計な知ったかぶりをしないように、素直な感想で勝負しましょう。無理なら素直に降参すること。

また、特に法学専攻の方だと(必ずしもそうとは限りませんが)、「法科大学院に進学して法曹になった方がいいのでは?」など聞かれることもあるでしょう。
どう対応するかはそれぞれの方の判断ですが、法曹は弁護士を含みますから、「公務員になりたい理由」に立ち返る、つまり「裁判」より、「裁判所」に焦点を当てることが糸口になると思います(例えば、「裁判を国民の身近に」ではなく、「裁判所を国民の身近に」)。

なお、逆に、法科大学院(修了)生の場合、司法試験にいってしまうのでは、と疑われないか、という不安を持つ方もいるでしょうが、過去の受験生の面接状況を見ると、法科大学院(修了)生だからといって特に敬遠されることはないようです。
むしろ、法科大学院(修了)生というのは、「公務員なら裁判所職員だけ」という方もいるので、採用段階の歩留まりがよいくらいかもしれず、裁判所としては敬遠する理由はないでしょう。
どの道採用予定者数より多めに合格者を出すことですし、面接でいい評価が付くかが勝負です。