野上弥生子書斎と篠笛 | 軽井沢高原文庫

野上弥生子書斎と篠笛

 当館に移築されている野上弥生子書斎の前で篠笛を吹いているのは、当館庭にある中村真一郎文学碑建立の際(2003年7月)、建設世話人会事務局を担当してくださった朝倉力さんです(写真)。きょう、友人と4人で前橋市から久しぶりに来館されました。私にとって、うれしい再会です。

 当時、私は朝倉さんと二人で事務局を担当していました。元群馬県職員で、群馬交響楽団とも関係が深いという朝倉さんのてきぱきとした仕事ぶりにほんとうに脱帽したものでした。

 朝倉さんはフルートを演奏される方ですが、きょうは違いました。しばらく書斎前で周囲の自然のなかに溶け込むかのように静かにされていたかと思うと、おもむろに腰元から篠笛を取り出し、誰からの要請でもなく、即興で数曲、披露されました。透明で清らかな音色が響き渡りました。

 古来、日本各地の祭、獅子舞、神楽等の民俗芸能をはじめ、民謡、長唄などさまざまな音楽に使われてきた篠笛。『秀吉と利休』の作者・野上弥生子の茅葺の離れで篠笛とは、まさにぴったりの組み合わせと、私は一人合点しました。朝倉さんによれば、その「場」から、おのずと曲が生まれてくるのだとか。

 さて、次第に冬が近づいてきました。きのう、当館が所有する辻邦生山荘を完全に閉めに、旧軽井沢の現地に行ってきました。 (大藤 記)