幸田弘子さんご逝去
俳優・舞台朗読家の幸田弘子さんが11月24日、ご逝去されました。88歳。謹んでお悔やみ申し上げます。
幸田さんは、樋口一葉や「源氏物語」など日本文学の舞台朗読で知られ、そうした全く新しい分野を確立した方といっても過言ではないでしょう。泉鏡花、森鴎外、夏目漱石、堀辰雄、太宰治なども朗読なさっています。
ご主人の三善清達氏は東京音楽大学名誉教授で、当館理事だった作曲家の故・三善晃先生の兄上にあたります。
私の想像するに、幸田さんは誰よりも軽井沢を愛したお一人です。四季折々、旧軽井沢にある山荘を訪れておられたようです。当館の夏の高原文庫の会にも必ずご一家で参加されていました。
先月、秋も深まったある日、立原道造展を見学にお嬢さんの三善里沙子さんと来館くださいました。里沙子さんは立原グッズをたくさん求められましたが、幸田さんはショップをゆっくりご覧になった後、この本は持っていなかったわ、とおっしゃって、昨年刊行された辻邦生さんの『物語の海へ』(没後20年記念出版)を購入されました。
幸田さんのあの、やや低音の魅力的なお声は、私たちのように口や喉から発せられるのでなく、もっとずっと胸の内奥から発せられているように感じたものです。 (大藤 記)