「図録」をつくるということ | 軽井沢高原文庫

「図録」をつくるということ

 「全国文学館協議会会報」No.73が届き、早速、全部読みました。2018年10月26日に日本現代詩歌文学館で開かれた資料情報部会(第8回)報告集。 

 テーマは展覧会「図録」について。当館は定期刊行物「高原文庫」は刊行していますが、図録はあまり作っていませんので、参考になることばかりでした。

 読んでいて、私なりに印象に残ったことをひとつ、ふたつ、ここに紹介してみますと…。

 世田谷文学館学芸部の庭山貴裕さんによれば、同館は年4回の企画展を行っていて、近年、自館で編集し刊行する通常の図録の他に、図録を書店で販売される一般書籍で刊行するケースが増えてきたとのこと。同館は、文学展に限らず、絵本やグラフィック・デザイン、映画、音楽、マンガなどについても幅広く企画展を開催しています。図録のデザイン造本設計などにも、工夫を凝らしている様子が分かります。

 鎌倉文学館の小田島一副館長によれば、同館は現在、常勤の学芸員5人と非常勤の学芸員2人ですべての業務を廻しているいるとのこと。2006年から指定管理者制度が導入され、2011年から指定管理の第二期が始まり、その翌年から図録をA5ヨコ、64ページに定型化しているそうです。れだと日本語の文章が右から左へ流れていくの読みやすく、ヨコ型にすることで図版も一列に並び、見る側も見やすい。これは作る側もレイアウトしやすそうで、神奈川近代文学館の秋の絵本展図録もこれに近い姿です。新潮流でしょうか。

 ただ、私が見るところ、ひとつだけ残念なのは、サイズ小さいため、資料のスケール感や、優れた資料がもつ感情のほとばしりのようなものが見る側に伝わってこないこと。

 なお、北九州市立文学館の小野恵学芸員が記されていた、最後に山崎会長が問われたという、「図録は誰のために作るのか」「図録は展示の再現なのか」「図録は研究資料となり得るのか」という問いは、私たちが常に念頭に置いておかなければならない重要な問題だろうと思いました。

 ところで、話題は変わりますが、私は最近、東京国立博物館で開かれている特別展「顔真卿―王羲之を超えた名筆―」を見て、深い感動を覚えました。その勢いで、図録購入してしまいました。A4判変形、350ページ余、定価2800円。重さはなんと1.6キロ! 圧倒的なボリュームと重さ。書を学ぶ人ならば、ほぼ原寸大の顔真卿の書が載ったこの図録を、あるいは生涯にわたって座右の書とするかもしれません。 (大藤 記)