ソポクレス「コロノスのオイディプス」読了
きのう、ソポクレス「コロノスのオイディプス」(高津春繁訳)を読了しました。言いようのない静謐な気持ちになりました。
この作品は、ソポクレスの死(紀元前406年)後、前401年に、彼の孫によって初めて上演された遺作で、詩人の最後の作とされています。
一見、同じ作者の「オイディプス王」のスピンオフととらえることができそうですが、劇の構成が極度に単純化され、劇効果を狙ったあらゆる作為のようなものがここでは一切、排除されているかのようにみえます。
それよりも、なにより本作においては、神々の圧倒的な存在感が全体を支配している(とくに後半部)のが印象的です。劇の最後で、オイディプスは神々と和解することによって、劇的な死を迎えます。
なお、ソポクレスの悲劇作品は全部で123篇と伝えられ、今日完全な形で残っているのは、本作を含め7つだけとのこと。いずれも、フィレンツェにあるソポクレスに関しては現存最古(11世紀前半)の手写本(通称L)の中に、アイスキュロスの諸作品と一緒に収められてあった(藤沢令夫)。ですから、紀元前5世紀の悲劇が約1500年後に筆写され、それからさらに約1000年後にあたる今、私がそれを読んでいるというわけです。 (大藤 記)