宇佐見英治『言葉の木蔭』(堀江敏幸編、港の人、2018.3)が刊行 | 軽井沢高原文庫

宇佐見英治『言葉の木蔭』(堀江敏幸編、港の人、2018.3)が刊行

 今年2018年は生誕百年という大きな節目を迎える日本の文学者が何人もいます。私の知る範囲でも、福永武彦、中村真一郎、堀田善衛、加藤道夫、宇佐見英治といった人たちがそれに該当します。

 軽井沢高原文庫では、この機会を捉えて、それらの方のうち、軽井沢に長年、仕事場を持ち、小説を書き続けた福永武彦氏、中村真一郎氏に、今年生誕99年にあたる加藤周一氏を加えて、「新しい世界文学へ  加藤周一・中村真一郎・福永武彦  マチネ・ポエティク、モスラ…」(仮称)展を夏に開催する予定です。中村氏は当館の前館長です。

 ところで、第二次世界大戦後、新しい劇作の期待の星であった加藤道夫氏が35歳で早世したあと、信濃追分の加藤氏の山荘を譲り受け、その後、夏を中心に、そこで本格的に作家活動を行っていったのが福永武彦氏でした。

 話が変わりますが、最近、上記のひとり、宇佐見英治氏の生誕百年を記念して、宇佐見英治『言葉の木蔭』(堀江敏幸編、港の人、2018.3.23)が刊行されました。サブタイトルは「詩から、詩へ」。矢内原伊作氏とともに宇佐見氏が深くかかわった同人誌「同時代」に発表した単行本未収録の文章を中心に編まれていますが、当館の「高原文庫」8号にご執筆いただいた「高原孤愁」も含まれています。

 ジャコメッティ、宮沢賢治、ヘルマン・ヘッセ、片山敏彦といった、宇佐見氏がよく書かれた人たちについての魅力的エッセイも興味深いですが、本書はそれだけでなく、『戦中歌集 海に叫ばむ』の一部、戦時の日記、辞世、自筆略年譜などの詩歌・記録なども集められ、巧みに配され、本書刊行への編者・刊行者の並々ならぬ思いを感じます。白を基調とした造本も、清楚で見事。当館でもぜひ販売したいと思います。  (大藤 記)