南方熊楠 | 軽井沢高原文庫

南方熊楠

  皆さまは、南方熊楠(みなかた・くまぐす)という人をご存知ですか。柳田國男と並んで日本民俗学の創始者といわれる人物です。  

 先日、全国美術館会議の研修会で紀州・田辺市を訪れた折、田辺市にある南方熊楠ゆかりの場所である南方熊楠邸、南方熊楠顕彰館、闘鶏神社などを訪ねてきました。学生時代、平凡社の南方熊楠全集を思い切って買い求め、読んだことなどもふと思い出しました。

 もっとも印象深かったのは、南方熊楠邸。熊楠が1916(大正5)年から1941(昭和16)年まで、最も長い25年間を過ごした場所。母屋のほか、書斎、土蔵、熊楠が粘菌の新種「ミナカデラ・ロンギフィラ」を発見した柿の木などがある広い庭があります。在野の碩学の研究拠点。熊楠はここで75歳で亡くなったのでした。

 熊楠邸に勤務されていた年配のご婦人と話していて、お話があまりに興味深いので、つい1時間ほど、話し込んでしまいました。あとで聞いて納得したのですが、その方は熊楠の妻松枝の縁者にあたり、かつ、熊楠の長女文枝の晩年十年余を一緒に過ごされた方とのこと。私の胸奥に響いてくるわけです。

 熊楠が研究園としていた約400坪の庭を歩いていて、センダン(栴檀)の木を見つけました。熊楠は臨終の床で「天井に紫の花が咲いている」と詩のような言葉を遺しましたが、それは夢うつつに顕れたセンダンの花だろうといわれています。  (大藤 記)