初の『温泉文学事典』刊行 | 軽井沢高原文庫

初の『温泉文学事典』刊行

『温泉文学事典』なる事典が初めて刊行されたそうで、編者の浦西和彦さん(関西大学名誉教授)がエッセイで紹介されていました(日経2016.12.2文化)。現代のように家に冷暖房のなかった時代、作家たちは、夏は山間の、冬は温暖な地域の温泉地に滞在して思索、執筆しました。そこへ後輩作家や編集者が訪ねてきてサロンができ、その地を舞台にした作品も数多く生れました。これは軽井沢にも言えること。温泉作家としてすぐに思い浮かぶのは、漱石、川端などですが、この事典には、473作家、853編、700カ所以上の温泉地が登場するとのこと。都道府県別では、熱海・伊豆を擁する静岡が圧倒的に多く、41の温泉地でのべ300超の作品があったそうです。描かれた温泉地の数は長野県の51が最多、温泉地では群馬の伊香保温泉が60作以上と熱海を抜いて最多だったといいます。浦西さんいわく、「作家は出版社のある東京に集まるため、関東近郊が多くなる」。浦西さんは、意外だった一つとして、網野菊、宇野千代、円地文子、林芙美子ら明治生まれの女性作家がけっこう温泉に行っていたことを指摘し、「この時代の女性はあまり温泉などに出かけないと思っていた」と述べられています。なお、昭和初期にはまだ混浴が普通だったそうです。