森鷗外記念館 | 軽井沢高原文庫

森鷗外記念館

2年ほど前にオープンし、行きたいと思っていた森鷗外記念館に先日、行ってきました。文京区千駄木1-23-4。団子坂上にあり、森鷗外が30歳の時、家を建て、60歳で亡くなるまで暮らした場所。鷗外は陸軍の軍医として勤める傍ら、この地で翻訳・小説・戯曲・詩歌などの創作活動を孜々として続けたのでした。大イチョウ、観潮楼正門跡や敷石など、当時を偲ぶ痕跡も残り、かつては品川沖が眺められたという方向に私も目を凝らしましたが沖は見えませんでした。かわりに、近くの保育園の庭の満開の桜が目に沁みました。ところで、記念館ですが、どことなくヨーロッパ的な石造りのカチッとした建物で、内部も独特な閉ざされた空間。ドイツに留学した鷗外、ヨーロッパ文学を日本に紹介した鷗外にはふさわしい空間かもしれないとも思いました。展示室は地下1階にあり、最初のL字のコーナーは得るものが多くありました。展示室の一隅に、友人賀古鶴所(つるど)に書き取らせたという鷗外の遺言のレプリカが展示されていました。その激しい文面と筆使いに、生涯一度も故郷の津和野に帰らなかったという森林太郎の思いを感じました。じつは、そのあと、私は鷗外が「舞姫」などを書いた池之端の場所にもぶらぶら歩いて行き、今も保存される建物を見、庭を歩き、池の錦鯉のゆっくり泳ぐのを眺めたのでした。私は鷗外が散策したはずの界隈を歩きながら、『渋江抽斎』に感動し、岩波の石川淳さん編『鷗外選集』を神田の古書店で思い切って買った遠い学生時代のことを思いました。