デューラー「メランコリアⅠ」 | 軽井沢高原文庫

デューラー「メランコリアⅠ」

福岡伸一さんのコラム「芸術と科学の間」9は、デューラー「メランコリアⅠ」を取り上げていますが、この精緻な名画を読み解く深度に驚きました。憂鬱そうに沈思黙考する天使。四象限に分けられた各マスの和も等しくなる完全魔方陣。その下段真ん中に作製年1514年が描きこまれるという手の込みよう。ここまではパノフスキーが20世紀半ばに発表済み。私は久しぶりに、プリンストン大学出版局から出たパノフスキーのイコノロジー研究を取り出し、確認しました。その先が福岡さんの独壇場。絵の左にある幾何学的多面体は、L-アミノ酸の結晶体ではないかと、ある学者が指摘したとのこと。鏡像関係にあるL型とD型の二つのアミノ酸のうち、われわれ生命はなぜかL型だけを採用したそう。生体のタンパク質はすべてL型アミノ酸から構成されていて、たとえばL型グルタミン酸には旨味があるのに、D型グルタミン酸には味がない。舌は、L型にしか反応しないのだそうです。では、L型アミノ酸はどこから来たのか。それは彗星の尾に乗ってはるか宇宙からやってきた、と推測されるとのことです。ここには、仮説や推測がだいぶ混じっていますが、この話、とても面白いではありませんか。さらに、名画の製作年1514年は、なんと、今からちょうど500年前。