鶴見俊輔『流れに抗して』 | 軽井沢高原文庫

鶴見俊輔『流れに抗して』

最近、鶴見俊輔『流れに抗して』(2013.10、編集グループSURE)を大変興味深く読みました。小さい本ながら、鶴見俊輔氏の考え方がぎっしり詰まった本。鶴見さんは、過去を回想する時でも、映画の一シーンのように、出会いや出来事を鮮やかに描き出すことのできる稀な人です。それは鶴見さんが映画や漫画に相当詳しいことと関係あるのか、どうか。この本によれば、安保の後の頃、鶴見さんの定収入は週刊雑誌に映画の批評を書くことだけだったそうです。当時は年100本見ていた由。それはとにかく、この本は「『戦時期日本の精神史』を書いて」や与謝野晶子の評論のことなどが収録されていますが、私が面白いと思ったのは「加太こうじのこと」。紙芝居「黄金バット」を描いた人。自主刊行の「思想の科学」社長を10年引き受け、赤字は鶴見さんと折半するという約束で、約束どおりの任期を果たしたのだそう。その出会いが、最初に触れたように、すこぶる面白いのです。人に対するに高下をもうけない鶴見さんのなせるわざでしょうか。話はそれますが、加太さん(故人)は追分に山荘をお持ちで、もう四半世紀前、高原文庫の会にも参加いただいたことがあります。なお、安土桃山に遡る加太家の由来が石井研堂『明治事物起源』に書かれていることを、鶴見さんのこの本で初めて知りました。