畑中良輔氏と堀辰雄 | 軽井沢高原文庫

畑中良輔氏と堀辰雄

バリトン歌手の畑中良輔氏が先日、お亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。畑中氏は東京音楽学校の学生時代、音楽嫌悪症に陥り、音楽を始めたことを後悔していた時、堀辰雄の『美しい村』に出会ったそうです。「フーガのような微妙な小説―堀辰雄の『美しい村』は僕に音楽を甦らせた」と『演奏の風景』に書かれています。当時、畑中氏は堀辰雄に手紙を出し、堀さんからは「君の詩も愉快に拝見しました 素直ないいものをおもちのようですから音楽の勉強をなさる傍らいつまでも勉強して下さい」という返事をもらっています(昭和17年1月28日付)。先年、加藤周一氏がお亡くなりになり、今また畑中氏のご逝去で、堀多恵子『堀辰雄の周辺』に描かれた人々がこれですべて、物故されたことになります。当館では8年ほど前、堀辰雄展の際、エッセイ「はじめての手紙」をご寄稿いただきました。