北杜夫『楡家の人びと』(続々々) | 軽井沢高原文庫

北杜夫『楡家の人びと』(続々々)

北杜夫『楡家の人びと』を読了。ようやくこの名作を読み終えました。第三部は太平洋戦争真っ只中から、終戦3ヵ月後くらいまで。峻一(楡徹吉長男)の戦地ウエーク島での絶望的な生活、藍子(同長女)の恋人の戦死、周二(同ニ男)の軍事教練など、読み進むにつれ、しだいに胸が苦しくなってきました。加えて楡病院院長・徹吉の急速な老いと、単身、山形への疎開。そして昭和20年5月の東京大空襲…。この5月25日の東京大空襲の記述は当時、麻布中学生の周二(=北杜夫さん)の実体験に裏打ちされ、非常な説得力をもって響いてきます。そして、楡病院の焼失…。こうして読んでくると、一部は楡基一郎、二部は楡徹吉、三部は峻一、藍子、周二とその母龍子という、楡家三代を中心に、明治から昭和への時代変遷を背景に、一大叙事詩として描かれていることがわかります。