鮨ざんまいが初競りで落札した大間産クロマグロは、報道によれば落札価格5億1030万円であった。諸経費や税金を差し引くと、漁師の手元に残る金額はおおよそ1.6億円から1.8億円程度になるとされている。それでもなお、この初競りのマグロは、漁師にとって「夢」と「やる気」を与える存在であることに変わりはない。
テレビでは毎年、「大間のマグロ戦争」と題した番組が放映されており、私は欠かさず視聴している。今年は1月11日に新年の宴会があり、放送当日に見ることができなかったが、再放送などで必ず視聴するつもりである。それほどまでに、この番組には人を引きつける力がある。
今回あらためて印象に残ったのは、高齢の漁師が非常に多いという事実であった。74歳、75歳でも現役で海に出て、大きなマグロを釣り上げている。彼らは口をそろえて、「80歳までは現役でやりたい」と語る。そこに迷いはない。

彼らには「元会社員」「元〇〇」といった肩書は存在しない。あるのはただ一つ、「プロのマグロ漁師」という肩書だけである。年齢や過去ではなく、現在もなお結果を出し、生計を立てているかどうか、その一点で評価されている。
日本は少子高齢化が進み、高齢者も長く働かなければ生活が成り立たない時代に入っている。しかし多くの職場では、年齢を理由に役割を失い、定年という線引きで現役を終えることが当然とされてきた。その結果、働く力のある高齢者が制度の外に押し出されている。
一方、大間では、「マグロと戦えるなら現役がある」。年齢は問われない。できるか、できないか、それだけである。ここには、美談ではなく、極めて現実的で合理的な職業観が存在している。
定年制を前提としてきた日本のサラリーマン社会は、大間のマグロ漁師の働き方から学ぶべき点が多い。高齢者を「支えられる側」として扱うのではなく、「現役として価値を発揮できる構造」をどう作るか。その視点こそが、これからの働き方改革に求められている本質ではないだろうか。