日本の深刻な問題――とりわけ少子高齢化に付随する複合的な危機――を克服する道は、
「大胆な未来への投資」以外に、実質的な選択肢は存在しない。

その中核となるのが、
健康寿命を77歳まで延ばし、75歳まで無理なく勤労できる社会を設計することである。

これは理想論ではなく、
人口・財政・労働力という現実条件から導かれる、最も合理的な解である。

 

数字で見る日本の現状|寿命と健康寿命の大きなギャップ

現在の日本では、

  • 平均寿命
    • 男性:約81歳
    • 女性:約87歳

に達している。

一方で、健康寿命は、

  • 男性:約73歳
  • 女性:約75歳

にとどまっており、
平均で10年前後の「不健康な期間」が存在している。

この期間は、本人の生活の質が低下するだけでなく、
医療・介護費の増加を通じて、社会全体の重い負担となっている。

 

社会保障費が示す構造的な危機

医療・介護を含む社会保障給付費は、

  • 1990年:約47兆円
  • 2023年:約137兆円

と、約30年で3倍近くに膨らんだ。

さらに、

  • 2040年には190兆円を超える

と見込まれている。

一方で、支える側である現役世代は減り続けている。
「支える人が減り、支えられる期間が伸びている」
これが、日本の財政と社会を圧迫する構造的要因である。

 

労働力人口は確実に減っていく

日本の労働力人口は、

  • 1995年:約8,700万人(ピーク)
  • 2023年:約7,400万人
  • 2040年:約6,000万人(推計)

と、今後も大きく減少していく。

出生率対策は重要だが、
効果が表れるまでには20年以上かかる。

今後10〜20年の現実に対応できる即効性のある策は、
「すでに存在する人が、より長く健康に社会参加できるようにすること」しかない。

 

健康寿命77歳・勤労75歳社会とは何か

健康寿命を77歳まで延ばすことができれば、
多くの人が70代前半まで自立した生活を送り、社会と関わり続けることが可能になる。

ここで重要なのは、
75歳まで働く=全員がフルタイムで働くことではないという点である。

  • 短時間労働
  • 地域活動
  • 指導・補助的役割
  • 経験を活かす仕事

体力や能力に応じた多様な働き方を選べる社会こそが目標である。

 

高齢者は「負担」ではなく人的資本

この社会設計によって、

  • 労働力不足は緩和され
  • 年金・医療・介護に「一方的に支えられる期間」は短くなる

高齢者は
「社会の負担」ではなく、経験と知見を持つ人的資本として再定義される。

これは、高齢者に無理を強いる政策ではない。
健康で、尊厳を保ち、社会とつながり続ける選択肢を増やすための未来投資である。

 

少子高齢化は変えられないが、未来は選べる

少子高齢化という現実は、すでに変えられない。
しかし、その結果として社会が衰退するかどうかは、これからの選択次第である。

人口減少を前提に、

  • 健康寿命を延ばし
  • 働ける期間を広げ
  • 社会参加の形を多様化する

この社会設計こそが、
日本に残された最も現実的で、最も合理的な未来への投資である。