続きです。
50年以上前の話です。
3歳の時に祖父母の暮らす島に兄と二人、預けられることになったお話です。
ある日、祖父が言った。
「今日は船で魚を釣りに行きますけれども、koyukiちゃんも行くかね?」
なぜか時々、孫にも丁寧語で話すじいちゃん。
「えっ!?じいちゃん、船のあると?
うん、うん、行くよ、行く。行ってみたかー。魚釣りするー」。
ということで、じいちゃんと二人で海へ船釣りに出かけることにした。
兄はお留守番なのか、地元の保育園に行っていたのか、よく分かりません。
家の前の道路を100mほど行くと、海に降りていく、コンクリートに砂利の混ざった舗装された階段があった。途中から舗装がなくなって土と木材の道になっていくが、道の両脇は木々で覆われ、その木立の中を港の商店で買ってもらった赤いサンダルをキュッ、キュッと鳴らしながら、じいちゃんについて行った。
木立を抜けると白い砂浜と青い海が目の前に広がっていました。
右手の方に祖父の白い小舟があった。
水が溜まっていたので、バケツですくい出すじいちゃん。
海の方にまで細い丸太が何本も転がっていて、じいちゃんがその上を転がすように船を押していく。
わたしも手伝って押す。
丸太がないところまで来ると、最初の丸太を浅瀬の近くまで運び、また船を押す。
ようやく岸辺まで来たところで、必ず座っているように言われ船に乗った。
船の中に取り付けてあった櫂で船を漕ぎ出すじいちゃん。
天気は良く海は凪いでいた。
釣りの方法は確か撒餌して、釣竿を使っていた気がする。
どのくらい経ったかその日は一向に釣れず、まだ釣れん?まだ釣れん?と飽きるのが早いのが子どもである。しばらくして、あっ、釣れた、釣れた、と小さいのが数匹釣れたので、私は満足だった。もう帰ろう、もう帰ろう、と連発し、じいちゃんんも諦めた。
坂道を登る途中、サンダルが濡れていたので足が痛くなって、じいちゃんにおぶってもらい、帰って来た。
帰宅すると、ばあちゃんは
「あんまり釣れんやったね?これじゃあ夕飯にはできんねえ、ゴローちゃんのご飯くらいやねえ」とグフグフッ、グフグフッと笑って言った。
魚はお味噌汁の出汁か、ゴローちゃんのご飯になったんじゃないかと思います。
つづく
10年ほど前の風景。
この場所か、この岬の向こう側だと思います。
その後も毎年夏休み、島に訪れた際には、家族でこの砂浜で海水浴をしました。
岩窟があったので、そこで涼んだり、着替えたりしました。
私たち家族以外誰も来ない、プライベートビーチでした。
NHK朝の連続ドラマ『ちむどんどん』のオープニングCGアニメーションの海のシーンと重なり、懐かしく思い出します。
読んでくださり、ありがとうございます。