今日は二本立てで行きます。
2010年に環境省が中心となって始まった大規模長期出生コホート研究・エコチル調査。
https://www.env.go.jp/chemi/ceh/
開始から10年、さまざまな成果が報告され始めている。
①
出典:QLifePro 医療ニュース2019年12月27日 (金)配信 産婦人科疾患.M3com
Adachi S et al., Lancet Planet Health 2019;3:e529-38. Paternal occupational exposure to chemicals and secondary sex ratio: results from the Japan Environment and Children's Study
西宮から。読んでいて怖くなった。
・女性パートナーの妊娠成立前に
殺虫剤を
週に1回以上使用する職に
就いていた父親659名の子どもが
男児である割合(44.5%)は、
月に1~3回使用する
父親4,551名(50.7%)や
使用機会がない父親
42,185名(51.1%)に比べ
低かった
・医療用消毒剤を
週1回以上使用する職に
就いていた父親2,428名の子どもが
男児である割合(48.9%)は、
使用機会がない父親
43,214名、51.1%)に比べ
低かった
・過去に報告のあった
水銀や放射線を使用する職
に関しては、
子どもの性比との関連は
認められなかった
男児の割合が
世界的に減る傾向にある
と云われるが、
薬剤の影響の可能性が考えられる。
殺虫剤の生殖毒性については
これまでにもいくらか紹介してきたが
医療用消毒剤にはビックリした。
私も週1回どころの話ではない
医師になって27年来
むしろ使わなかった診察日が
どれほどあっただろうか?
なお飽くまでも
質問票への回答により
評価した結果であって、
血中の化学物質濃度などの
客観的な指標を用いたわけではなく、
殺虫剤や消毒剤の種類までは
同定できていない。
②
出典:化学工業日報2021年9月21日 (火)配信 産婦人科疾患その他/M3com
Chaochen Ma et al., Environ Int. 2021 Nov;156:106762. Association of prenatal exposure to cadmium with neurodevelopment in children at 2 years of age: The Japan Environment and Children's Study
ある金属について、筑波から。
・3545組の母児について
妊娠中の血中カドミウム濃度、
出産時の臍帯血カドミウム濃度と、
出生児の神経発達を調べた
・全体解析では
カドミウム濃度と神経発達指標に
関連は無かった
・層別解析では
男児では姿勢・運動の得点について、
妊娠中喫煙と妊娠糖尿病は神経発達指標について、
カドミウム濃度との関係が示唆された
カドミウム公害といえば
社会科で習った
神岡鉱山/神通川流域/イタイイタイ病
を想い出すが、
コチラも有名な足尾銅山鉱毒事件
もそうらしい。
食物、たばこにも含まれるカドミウム。
妊娠中喫煙、妊娠糖尿病、
男児であることが、
胎児がカドミウムの影響を
受けやすくなる
三要素だという。
この2つの調査や
過去の内分泌撹乱物質
の研究から
環境毒の影響を
より受けやすいのは
男児であることが
容易に推測される。
今日の一曲:
Marvin Gaye - Mercy, Mercy Me (The Ecology)
再掲。エコロジー。1971年に彼はすでにこの言葉を用いているのに驚く。
預言者か?