38歳女性の上皮組織サンプルからウイルスが分離された。  分析の結果、ウイルスは宿主の酵素を用いて核内で複製することがわかった。  感染ウイルスは次のどのファミリーに属する可能性が高いか?


 A.
パピローマウイルス科
 (58%)


 B.
パラミクソウイルス科
 (11%)

 C.
ピコルナウイルス科
 (11%)

 D.
ポックスウイルス科
 (13%)

 E.
トガウイルス科
 (4%)




正解
A

パピローマウイルスは、円形の二本鎖DNAゲノムを持つ、小型で非エンベロープ型の正20面体ウイルスである。  ヒトパピローマウイルス(HPV)のように、ヒトの扁平上皮細胞内に感染し複製することによって病気を引き起こすものが知られている。  これらのウイルスは、タンパク質の合成とゲノムの複製に細胞の分子機構を利用している。  ウイルスの遺伝物質が核に到達すると、ウイルスDNAを鋳型としてmRNAが合成され、細胞質リボソームによってタンパク質に翻訳される。  ウイルスのタンパク質はp53とRbタンパク質を不活性化し、細胞をS期に移行させ、細胞のDNAポリメラーゼによるウイルスゲノムの複製を誘導する。

一般に、DNAウイルス(ポックスウイルスを除く)は核で複製し、RNAウイルス(オルソミクソウイルスとレトロウイルスを除く)は細胞質で複製する。  ポジティブセンスの一本鎖RNAウイルスのRNAは、ウイルスタンパク質に直接翻訳することができる。  一方、ネガティブセンスRNAウイルスは、ネガティブセンスRNAを翻訳鋳型として用いることができないため、自らRNA依存性RNAポリメラーゼを供給しなければならない。

(選択肢B)パラミクソウイルスはエンベロープ型のネガティブセンス一本鎖RNAウイルスで、感染ビリオンとともに細胞内に侵入し、ウイルスにコードされたRNAポリメラーゼを用いて細胞質でゲノムを複製する。

(選択肢CとE)トガウイルス(エンベロープ型)とピコルナウイルス(ネイキッド型)はポジティブセンスの一本鎖RNAウイルスで、細胞質内でゲノムを複製する。

(選択肢D)ポックスウイルスは直鎖の二本鎖DNAゲノムを持つ大型ウイルスである。  ポックスウイルスはDNAウイルスの中でも、ウイルスにコードされた複数の酵素を用いてゲノムを完全に細胞質内で複製するという点でユニークである。

教育目的
パピローマウイルスは、宿主細胞のDNAおよびRNAポリメラーゼを利用して、宿主細胞の核内で複製する。  ポックスウイルスは宿主細胞核内で複製しないという点で、DNAウイルスの中ではユニークである。