ある20歳の女性が、勤務先主催の健康フェアの超音波検診で骨密度が低いことが判明したため、当クリニックに紹介された。  他に医学的問題はなく、薬も服用していない。  患者は熱心なサイクリストで、週に数回ロングライドに出かけている。  十分な量の乳製品と野菜を含むバラエティーに富んだ食事をしている。  身体所見では軽度の側弯が認められる。  眼科的検査では、薄い強膜が認められ、その下の脈絡膜層が見える。  二重エネルギーX線吸収測定は骨粗鬆症の診断となる。  この患者において合成が不適切である可能性が最も高い蛋白質はどれか?


 A.
コラーゲン
 (81%)


 B.
銅トランスポーター
 (0%)

 C.
ジストロフィン
 (0%)

 D.
フィブリリン
 (3%)

 E.
副甲状腺ホルモン
 (2%)

 F.
ビタミンD受容体
 (10%)





この患者の早期発症の骨粗鬆症と眼所見は、骨 の脆弱性を特徴とするまれな遺伝性疾患 である骨形成不全症(OI)を示唆している。  起立耐性失調は、I型コラーゲンを形成す るタンパク質をコードするCOL1A1および COL1A2遺伝子の変異により発症することが 多い。  このタイプのコラーゲンは、骨、腱、靭帯、皮膚、強膜の主要な構造成分である。
骨形成不全症(OI)の重症度は、出生時の多発骨折から 早発性骨粗鬆症まで、かなり幅がある。  その他の症状として は、低身長、側弯症、青色強膜、難聴、皮膚や靭帯 の弛緩性の増大、易打撲性などがある。  起立耐性失調患者にみられる青色強膜は、コラー ゲン含有量の減少により強膜が異常に薄く半透 明になり、その下の脈絡膜が見えるようになるため である。  青色強膜は起立耐性失調を診断するも のではない。青色強膜は、他のまれな疾患(例 えば、早老症、弛緩性皮膚炎)でもみられることがあ り、新生児では正常な所見であることもある。

(選択肢B) 腸内銅輸送障害は、痙攣、知的障害、骨格異 常、もろい毛髪を特徴とするX連鎖性劣性 障害であるメンケス症候群の原因となる。  このメンケス症候群では青色強膜が見られるが、この患者は女性であり、この疾患に一致する他の所見がない。

(選択肢C)筋線維と細胞外マトリックスをつなぐタンパク質であるジストロフィンの欠損が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを引き起こす。  罹患患者は小児期に進行性の筋力低下を呈する。

(選択肢D)マルファン症候群は、弾性線維形成に重要な糖タンパク質であるフィブリリンの欠損によって起こる。  骨格系(例えば、長い四肢、側弯症)および心臓血管系の異常(例えば、大動脈瘤/解離)を特徴とする。

(選択肢E)原発性副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモンの低下から生じ、その結果、カルシウム濃度が低下する。  急性の低カルシウム血症は典型的な所見であり、慢性の副甲状腺機能低下症は骨塩量の増加を引き起こす傾向がある。

(選択肢F)ビタミンD受容体の常染色体劣性突然変異は、低リン血症、成長遅延、骨軟化症を引き起こすまれなビタミンD抵抗性くる病を引き起こすことがある。

教育目的
骨形成不全症は、I型コラーゲン形成不全を引き起こす突然変異に起因する。  骨格脆弱性の特徴は非常に多様であり、出生時の多発骨折から早発性骨粗鬆症まで多岐にわたる。  強膜が異常に薄く、その下にある脈絡膜が透けて見える(すなわち、青色強膜)のが一般的な関連所見である。