何と言っても懐かしい芝居は「浅草瓢箪池」です。昭和38年3月4月2ヶ月公演でした。
菊田一夫作-演出。中村たかお演出補
浜木綿子。八波むと志。益田喜頓。三遊亭園正。中村芝鶴。利根はる恵。林与一。中山千夏。井上孝雄。高岡奈千子。小柳久子。小文字まり。川路桂子。小鹿番。劇団東宝現代劇とそうそうたるメンバーでした。
当時これだけのメンバーを揃えられるのは菊田一夫先生ならではです。
しかし当時私は食えないのでアルバイトに一生懸命でした。
だから偉い先生方にはにらまれていました。
忘れもしません。第二幕ニ場「玉木座の楽屋口」です。役は靴修繕屋です。名前もついていません下手左端に大きく店を構えてます。靴を修理して弁当食べて、それも1粒づつお箸で摘まんで食べて、細かくです。
その場は約30分近くあります。まあ細かく細かく芝居してました。中央の芝居には音も立てずに邪魔しないようにそうっと演じてました。
それでもお客さんはその下手端で演じている私を観てるんですね。絶対に気は抜けません。
米粒を、1粒ずつ箸で口許迄持っていくのをじっと見てるんですよ。
どんなに音を、立てないでいても中央で芝居している役者には気になるのか、早速一番神経質な益田喜頓さんには気になつたらしくて演出家の方にクレームが来たそうです。でも演出家はあのぐらいの音は効果音として必要ですと、きつく断ったそうで堂々と自然に演じました。
おかげでその成り行きは評判が良かったです。