最近ドキュメンタリーで浅草の車夫の修行をよく取り上げている。
私も舞台で何回も車引きの役を演じている。日比谷芸術座(現在クリエ)と名古屋中日劇場と帝国劇場で。芸術座では「あかさたな」という、小幡欣治作演出。三木のり平。山田五十鈴。水谷八重子。丹阿弥谷津子出演。中日劇場では三木のり平、山田五十鈴。園佳也子、の「あかさたな」と3回公演して、いずれも車引き東六である。
そうして、昭和58年3月帝国劇場の「明治一代女」である。平岩弓枝脚本•演出。山本陽子。中村勘九郎。安奈淳。田村亮。松原千明。淡島千景。一の宮あつ子。
三木のり平先生は、すつかり私の車引きの運転を信用されて安心されていた。「小林君でなくてはだめだ」と東映の映画出演迄推薦されていた。
十七代目中村勘三郎先生は何回も帝国劇場に脚を運んで下さって勘九郎(当時)さんに「こばちゃん」は見事明治の車引きになっていると仰られて、「こばちゃんに伝えておいて」と勘九郎さんから聞いたときは本当に嬉しかった。
あの頃は勘三郎先生にしても、平岩弓枝先生にしても美空ひばりさんにしても「こばちゃん!」も呼んで下さって本当に光栄だった。
昔のNHKのラジオドラマから知識を得てた、運転する前に「あらよ!」と気合いを入れるのである。
すべからく車夫の精神が心に決まった。
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