時は昭和36年9月、古い古い話ですが、文部大臣賞。テアトロン賞。菊池寛賞をとった「がめつい奴」九州戸畑市公民文化ホールと福岡大博劇場の話です。

 菊池寛先生といえば、私が早稲田実業高校2年の時に、学校祭の演劇公演で先生の戯曲「真似」の演出を手伝って何か賞をとった覚えがあります。

 当時は貧乏中の貧乏してて、早稲田実業高校も夜学に通っていて…学生委員もやり、昼はアルバイトをやり、雪村いづみやペリー•コモの「星を見つめないで」などなど聴いてうつつを抜かしていました。

 話がずれましたが…丁度「がめつい奴」を福岡大博劇場で公演していた最中です突然停電しました。その時すかさず一本のローソクを持ってあの劇場の舞台を照らしめる菊田一夫先生の姿を発見、いやあ感動しました。大きな舞台にかすかな灯り。

 先生は舞台に命をかけているんだ。日頃から我々現代劇に舞台に命をかけろ!と、おっしゃっているのがわかります。
 
 舞台は何かおこるかわかりません。

 上から物がおちたり、地震があったり、台詞がでてこなかったり、おまけに相手役が出て来なかったり、親の死にめに会えなったり、おまけに舞台出演中に、我慢出来なくてトイレに行く輩もおりました。生きている実感です。

 大博劇場とは、もう今は、なくなってしまったと思いますが、とてもとても古い劇場です。

 勿論 冷房何かありません。裸電球でまわりには虫がたかっている、丁度夏で開けっ放しの楽屋は虫の大振る舞いです。

 本当かどうか地下に縁起もので白い大蛇を飼っているなんでいうし、周り舞台は職人さんが3人で手回していると言うし、だけどだけど味な楽屋でした。

 まだまだ昔の遊廓の名残りもあって、人情も半端なく活気がありました。

 大スターの榎本健一先生と福岡の街を散歩して珈琲店に入って豪華な芸能界の話を聞いて楽しかったのが蘇ります。

 三益愛子。榎本健一。萬代峯子。雪代敬子。中山千夏。佐々十郎。高岡奈千子。浦島千歌子。井上孝雄。劇団•東宝現代劇と皆さん思い出されます。

 この「がめつい奴」前後に名古屋名鉄ホール「佐渡島他吉の生涯」森繁久彌主演「放浪記」芸術座森光子主演テアトロン賞と続きます。