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終戦後少年だった頃、新宿南口に新宿第一劇場があって、そこに阪東妻三郎一座の公演がかかっていた。
私はすぐさま観劇しにいってた。チャンバラが久しぶりに見れて感動だった。
終戦後駐留軍から時代劇映画にはチャンバラ(剣戟)はワンシーンだけと制限されていて、少年にとってはチャンバラ渇望に陥っていた頃であった。
あの頃の少年は映画の話題と言えばチャンバラの迫力凄さが常だった。
そんな憧れの阪東妻三郎さんを偲ぶ公演に大人になってまさか出演する事ができたとは。
本当にあまり知られていない田村正和さん出演の阪妻を偲ぶ 「雄呂血 5場 無頼漢」榎本滋民脚本。津村健二演出。 田村高廣。田村正和。田村亮。江戸家猫八。岸田森。松田春翠。小柳久子。津島恵子。藤田弓子。中尾ミエ。正司歌江。長門裕之。
阪妻さんの無声映画「雄呂血」の舞台化である。
もう1本は「無法松の一生」である。こちらは田村高廣さんが主役。東京宝塚劇場 昭和53年2月2日初日、26日迄で名古屋御園座で6月に再演している。
私も2本共出演していた。
しかも「雄呂血」は田村正和さんと田村亮さんとの半月ずつのダブルキャストである。その中の1場面4場治良三宅で田村正和さん田村亮さん演ずる平三郎と私演ずるアホの三太の二人の芝居の場面である。
唯一笑いをとる場面で如何様にもお客様をわかせる楽しい場面だった。
正和さんと亮さんと半月ずつお相手したが、正和さんが静であり、亮さんは動であった。似ている様で似ていない不思議な感覚だった。然しどちらも芝居がしやすく、毎日が楽しくてしょうがない。
舞台稽古を見ていた同期の井上孝雄がすぐ舞台袖迄きて「アホ役、藤山寛美さんにも負けないよ」と評してくれたのは、うれしかった。
田村高廣さん田村亮さんとは特に東宝の舞台が何本も御一緒させていただき親しかったので、よく遊びに行った。田村高廣さんにはプロンプを頼まれて、もう確実に覚えていらっしゃるのに楽日迄依頼された。
京橋にあるフイルム•ライヴラリーに阪東妻三郎特集をやっていた時は田村亮さんと見にいった。
田村正和さんは飲みに行ってもとっても優しくて感じのいい方だった。
公演の打ち上げパーティで私の作演出のパロディをやると滅茶苦茶に喜んで下さった。
そんな思い出が今よみがえる。