芸術座(現在シアタークリエ)と言う劇場が日比谷にあった事も忘れられ劇団・東宝現代劇いずこという時だから「梨の会」は今や知る人は少ない。
昭和38年3月日比谷芸術座にて歌舞伎界の名優中村芝鶴先生主宰の梨の会復活第一回公演が行われた。梨の会が発足したのは大正13年である。長い年月を経て何回も公演された梨の会の復活である。
菊田一夫潤色演出・中村芝鶴演出中国千一夜「高慢の鼻」が上演された。
中村芝鶴、藤代 佳子、中山 千夏、中村 高麗蔵、小鹿 番、歌舞伎界からと東宝現代劇から数十人の出演。
地味だが基本のしっかりした作品だった。
私の役は孔子の弟子三人の中の一人子淵である。シリヤスな役だった。
その前に芸術座で公演した「歌劇 手児奈」の合評会で中村芝鶴先生からのご好評をたまわった挙句の出演だった。
たった3日間の公演だったがとても充実した芝居だった。
芝鶴先生がお亡くなりになって芸術座における「梨の会」公演はそれっきりだった。
思い出すは最近死去した「ミラーマン」「柔道一直線」の主演の石田 信之君は中村芝鶴先生のお弟子さんだった。凄く真面目て、まだまだ勉強中の私にまで演技を教えて下さいと言って来て、何回も繰り返し稽古したのを覚えている。
忘れられない「梨の会」は私の心の礎となってくれます。